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最後の決闘裁判 [歴史絵巻・文芸作品]

■羅生門スタイルで描く、それぞれの真実

最後の決闘裁判 4K UHD [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2022/01/26
  • メディア: Blu-ray
満足度★70点
カルージュとル・グリという騎士2人と、カルージュの妻マルグリットの3人の視点でえがく。
ことの発端になった事件はル・グリによるマルグリットへの「強姦」なのだから、被害者である彼女の告発と視点が真実と捉えることができるだろう。
カルージュもル・グリも違うパターンの尊大さをもつ。カルージュは家名と騎士道に固執し「こうあるべき」という姿に囚われている。彼の視点では彼なりにマルグリットを大事に思っていたようだが、マルグリットは「息子を生むための道具」としか扱われていないと感じている。
ル・グリも自分が色目を使えば大概の女は落ちると思っているし、カルージュに対しても、愚直で戦も下手な友人を影で助けてやっているのはこの俺だという尊大さがある。
女性に対してどちらにも共通するのは「俺が気持ち良ければ相手も気持ちいだろう」という至極ばかばかしく自己中心的な思い込みである。
そこに「子供ができないのは絶頂に達してないから」という(半ば)誤った科学(妊娠の確率は上がるらしいが)を持ち出す医者や、ル・グリに好意を持っていたマルグリットの女友達の嫉妬からの密告が追い打ちとなり、さらに姑からも痛罵されてマルグリットは追い詰められる。
裁判ではカルージュとの褥で絶頂に達しているかという、今では信じられない審問も繰り広げられ、マルグリットが自分に噓をつかなくてはならない、苦しい場面も展開される。
ありていにいえば、姦淫はキリスト教統治下の時代でも当たり前の社会風俗だったといえるし、女性の強姦などというものは問題にすらならなかったのだろう。
でもことを傍観していたあらゆる女性たちの心にはさざ波が起きる。
「なぜ彼女はここまで貶められなきゃならないのか?」と。
決闘で夫のカルージュが亡くなった(負けた)場合、マルグリットは嘘を告白したとして火あぶりになる。彼女が死を賭けて噓をつくには、あまりにも危険な確率だ。
この映画を#metooの先駆け、とみる向きもあるが、この事件がきっかけで追随する女性が増えたわけではない。
現代の虐待やパワハラなどにも共通することだが、「お前が我慢さえすればことは丸く収まる」という被害者への圧力に屈しなかった、一人の人間の尊厳をかけた戦いだと、ただ単純に捉えたい。
少し残念なのは、重複したにもかかわらずそれほど視点の違いを感じなかった場面が多々あったこと。特に強姦の場面はマルグリット側だけでよかったのではないだろうか。
とはいえリドリー・スコットお得意の重厚なセットと、青い色調のトーンが寒々しく、3人の比率くような緊張感を醸し出す。
見るに損はしない余韻を残す映画でした。

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