マネーボール [スポーツ]
★満足度90点
■トレードの面白さとGMの孤独
人一倍野球に執着しているのに、一番冷静で一番遠い場所にいる。
野球を愛する気持ちと同等の挫折感をずっと抱えたまま、チームを強くする事に強い決意を漲らせている。選手を見る目に、自分が昔成し得なかった活躍に対する羨望と、耐え難い屈辱をぶり返し思い出す。
そんなGMの孤独を浮き彫りにする映画であって、華やかな話ではない。
そこがいいんだなぁ。
矛盾と複雑さに満ちた男、ビリー・ビーンをブラピが好演している。
後半、彼が試合を見に行かない理由が判明するシーンは、なんとも言えない切なさに満ちている。
冒頭、カメラに映るのはジーター、バーニー・ウィリアムズ、ポサダなどヤンキースの一時代を支えた名選手たち。そんなヤンキースにいずれ入ることになるジョニー・デーモン、ジオンビなどを放出することから映画は始まる。
そういえば自軍と戦うマリナーズの試合を見ている途中、モニタにイチローが大写しになる。これはある意味名誉なことだと思う。しかし、みんなヤンキースに入るんだなぁ…。
デーモンが移籍するレッドソックスは後半密接に関わってくる。彼、好きだったなぁ。
タイ人の血が入っている独特の土臭い風貌がかっこよかった。
とにかくメジャーファンにとっては見処満載。
ジェイソン・ジオンビの弟、ジェレミー・ジオンビや、劇中終始使うか使わないかで揉めていたスコット・ハッテバーグなどは、この映画を見てどう思ったのだろう。
特にジェレミー・ジオンビは見たくないだろうなぁ。折角出塁率をかわれたのに、チームのムードを堕落させるからという理由でトレードされちゃうんだもの(笑)
ハッテバーグ役の役者さんは、本人にそっくりだね!本人役で出演していると思ったくらい。
昨今、どんな業界でもすぐに結果を求められるが、改革には時間がかかる。
人気と収益が直結しているスポーツとなると、本当に難しいだろう。
トレードの激しさもメジャーの醍醐味だけど、ヘッドハンティングの桁違いの金額にも目を瞠る。
あんたたち、ちょっとおかしいんじゃないの?
たかが野球じゃないの、と。
しかし、だからこそそこに夢を見る余地があるんだろうなぁ。
去年まで頭おかしいと思われていたビル・ジェームズが、レッドソックスに巨額で雇われる、そんな世界。
アメリカは結果を出せば出る杭は「打たれない」のである。
メジャーと日本プロ野球の違いは随所に見られる。
たとえばピッチャーはファーストストライクを必ずとるよう求められるらしい。
ストライクでなおかつ、打たせて取る手法が多い。
空振りしても見逃ししても打たせて取っても、どの道「必ず1アウトは取る」という考え方なのだろう。
しかし日本はボール球を振らせるという手法。
メジャーのランナーは堂々と内野手の足を狩りにくるし、内野手はそれを避けながら球を投げるというスタイルは、見ていてフォームもくそもないけれど、日本のようにフォームに固執してしまいアウトが取れないよりはいいのである。
つくづく、野球は面白い。
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