SSブログ

私は貝になりたい [戦争ドラマ・戦争アクション]

★満足度65点

私は貝になりたい スタンダード・エディション [DVD]

私は貝になりたい スタンダード・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
  • メディア: DVD

■実話と勘違いすることを危惧する

加藤哲太郎という人の、実体験を元にして書かれた「狂える戦犯死刑囚」という手記の、遺言部分を元に創作された脚本で、実際にB級C級戦犯が死刑になったことはないという。
加藤哲太郎は死刑になったわけではないが、当時の内閣批判もこめて実話をベースにした創作を書いたらしい。詳しくはこちら⇒http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A0%E8%97%A4%E5%93%B2%E5%A4%AA%E9%83%8E

私はいつも思うのだが、戦争というナイーブな題材を描くとき、「本当に起きたことや起きてもおかしくなかった状況下において、架空の人物に戦争批判を仮託する」のは許容できるが、全く起きなかった事実を、恰もノンフィクションかのように描くのは危険だと思う。
制作者側が悲劇を誇張して描きたかったのだとしても、戦争体験していない世代は、それが実話か造話かわからない。
ひいては必要以上の自国批判に繋がりかねない。間違った歴史認識のまま何年も知識が積み重なる危険性もある。
もし日本が戦争の傍観者だったとしたら、ベトナム戦争のように北からロシア、南からアメリカと、本国が戦場で二分されたり、一部が香港のように植民地になっかもしれない。
世界を大戦に導いたきっかけは何なのか。冷静に判断しないと綺麗事ばかりが述べられ、目が曇る。

このドラマでは、悲劇を強調したいあまりか、首を捻るくだりが多い。
というか、内政批判がすぎる気がした。

軍事裁判で、「上官の命令は絶対です、上官の命令は天皇の命令と一緒です」と答えた日本人を米軍がせせら笑うところ。
上官の命令は絶対なのは何も日本だけではない。
(天皇と言う概念がわかるかわからないかは置いておいて)上官の命令に、いちいち下士官が書類を求めるだろうか。

拘置所での読経のシーンもありえることだろうか。米軍の足音と共に一斉に始まり一斉に終わる。あそこも過剰な気がした。

勝てる勝てると誇張しなければ、敗戦国がどんな憂き目に合うか、他のどんな国でも知ってる。
だからこそ当時の人は必死で戦ったのだと思う。
それを忘れてただただ自国批判することは、死んでいった先祖の方たちに失礼だし生き残った人たちにも失礼だと思う。

ただし、出演者の演技自体は中々の熱演ぶりで、面会のシーンや上官とのやり取りは胸に迫るものがあった。減刑を言い渡されたとぬか喜びした豊松を地獄に追い落とした死刑の宣告。

たとえ戦時下の話でなくても、冤罪で死刑を宣告される人間の無力さ、人間が人間を裁くことの残酷さを考えさせられる。
人間の総意…多数決の恐ろしさ…
生まれ変わったらまた家族に会いたいという言葉さえも、忘却の彼方へ消え去るほどの人間への憎しみと蔑み。
「貝になりたい」という台詞は衝撃的だった。
創作、ということを踏まえて鑑賞すれば、豊松は戦いたくもないのに戦争に駆り出される世界中の一般市民の代弁者だといえるかもしれない。


nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 1

A.Na

他にも史実と異なる部分があります。

矢野中将のモデルは岡田資中将らしいのですが。
両者とも「部下の行動は自分の責任において行われた事」と部下をかばったという点では共通していますが、重要な点で違う部分もあります。

岡田中将は「B29の搭乗員は捕虜ではなく、民間人を殺害した戦争犯罪者であり、彼らを処刑した行為はジュネーブ条約に違反していない」とも主張していますが、矢野中将はその種の主張はしていません。精々B29による爆撃を戦争犯罪だと主張している位です。

B29の搭乗員は捕虜として扱うべきか、それとも戦争犯罪者として処罰するべきか?この物語を見た人々の間で論議が巻き起こってもいいはずなのですが、「主人公に捕虜の処刑を強要した日本軍上層部が悪い」と思っている人々が結構多い様な気がします。ジュネーブ条約に違反した行為ではない可能性もあるのに。
by A.Na (2018-02-04 12:50) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0