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ミッドサマー [サイコスリラー・クライム・サスペンス・社会派]

満足度★50点

ミッドサマー 通常版 [Blu-ray]

ミッドサマー 通常版 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2020/09/09
  • メディア: Blu-ray
■コミューンからイニシェーションされたことで、自立する女性を描く

70年代によく作られたカルト系B級ホラーの要素を持ちつつ、あくまでもポシティブな狂喜を描き通す、という斬新さも感じた。

もし古代儀式を現代に再現したら、もしかしたらこんなものかもしれない。
生贄というそれ自体は神への捧げ物として祝福されたものであるはずだが、やはり生贄に与える苦痛は見ている側へもストレスを与えること想像に難くない。悲鳴や奇声をあげてトランス状態に陥ることは、罪悪感や恐怖を軽減させる効果もあるのだろう。

自然信仰の祭り=祀りを肌感覚で理解できる日本人には、村で行われていることがそれほど奇抜で滑稽には映らないのではないだろうか。

しかし他のレビューでも突っ込みが多かったが、90年に一度という設定の割には、村民が殺人などに慣れすぎていると思うし、そのサイクルにした必要性が全くわからない。
まあ現代で4.5年単位でこの祭りが行われていたら、流石にSNSなどでバレそうだとは思うが、せめて日本の式年遷宮ように20年周期ぐらいが妥当では。
しかも、ペレのように、村民たちはこの祭りのために戻ってきた者も少なくない様子。ということは、生贄を捧げることで村民の人口を一定に保つ必要性も全く感じない。村の中で近親相姦しなくても、いくらでも外部へ赴き血を新しくすることはできる。


そういう地理的制約があいまいなままなので、カルト的コミューンからの脱出劇というスリリングさは弱い。主役のダニーが彼氏への依存体質から脱却するというもう一つのストーリーが平行して描かれるが、彼女らの身に起こる倦怠期はカップルに起こりえる普通のことだよな…と思い返すと感情移入も今一つ。

口コミで日本の若い女性たちにヒット、と話題になったが、優柔不断で煮え切らない彼氏を最後の生贄にした主人公への共感と、「女王」という権力の甘い響きに自分の身を重ねたのかもしれない。
しかし私には、「だからなに?」という程度の感想しか持つことができなかった。

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ミッドナイト・トラベラー [ドキュメンタリー]

満足度★82点

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■難民の置かれた状況は生き地獄にほかならない

タリバン政権の恐ろしさというより、各国で難民がどう扱われるのかという実態の一部を描く映画。

感情と感覚に訴えかけてくる抽象的な描写が多く、細かな点でハッサン達が置かれた状況の不明点も多い。
たとえば
・スマホの通信費用は誰が払っているのか(動画は通信しなくてもとれるが、娘はネットでMichael Jacksonの動画を閲覧していたし、ハッサンも電話をかけていたことから通信機能は制限されていないと推測)
・トランジットから家族は出ることができたのか
・映像は誰に手渡され、商業ベースにのることができたのか

日本語の持つ曖昧さがそうさせてるのか訳が悪いのか、娘の最後のセリフが過去形なのか現在進行形なのかが、わからない。
最後にたどりついたのが自由への一歩を踏み出せる場所であるはずなのに、監獄を象徴する最低の場所だったという絶望を受け、見終わった後もあの家族はトランジットから無事解放されたのかが気になってしょうがない。
そして、そうか、この曖昧で不安な状態がほんの少しでも難民に近しいのだとしたら、観客がこのまま放り出されることに意味があるのだな、と気がつく。


否が応でも日本の入管の事件を連想する。ネットなどの書き込みでは、不法入国者は犯罪者だと辛辣なコメントも飛び交う。だが、彼らはただ単に「安全な場所で働いて、生きたい」と渡ってきただけであり、生来は殆どの日本人となんら代わりのないただの小市民だ。言葉のわからない国で、手続きのミスや悪質な斡旋業者のせいで収監された人もいる。

本来、人間の数が少なければ、好きに移動して好きな土地に住み着くことだって構わないだろう。生来、人間も動物なのだから、どこに住もうと自由なはずなのだ。
ハッサンたちは、国家の枠組みと管理により「人間」から「難民」にさせられているだけ。
そして犯罪に手を染めなけれ暮らせないような状態に追い込まれいるだけなのだ。

彼らがアフガンで生まれなければ?
聖職者やCIAの犯罪を堂々と描くアメリカ映画や、
ナチスの罪を描くドイツ映画のように、国家を糾弾する映画を撮っても、スタッフや監督は自由を阻まれることなく暮らしていただろう。

しかし世界が誤解しない方がいいのは、恐らく大多数の難民は愛国心を持っていて、子供への危害や紛争がなければ母国に帰りたいと思っていることである(勿論難民キャンプで生まれた世代ではまた違うだろうけれど)。
なのでシュプレヒコールで「母国へ帰れ!」とうのはとんでもない愚かな言葉で、彼らだって母国に帰りたいのは山々なのだ。

ジャレド・ダイアモンドの著書『危機と人類』の日本の章で、日本の難民の受け入れが低いことに言及していた。
西洋のモデルを例に、難民を受け入れベビーシッターなどとして雇うことにすれば、女性の産後の社会復帰にも役立つと提案していたが、この例が現実的ではなくても、難民を閉じこめておくのではなく市民の一部として社会活動に加える枠組みが早急に必要だと思う。


マイケル・ジャクソンは正義や差別や偏見と闘う歌を作ってきた。ハッサンの子どもが、意識的にしろ無意識にしろ、あの状況でマイケル・ジャクソンを選んだ感性が泣けてくる。

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レミニセンス [SF]

満足度★85点
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■近未来を舞台にした正統派ハードボイルド

メメント、インセプションに続き、記憶は人を幸せにするのか?という問いに、ノーラン(弟)が一つの解へと導く。記憶が人を幸せにするのなら、過去に生きたっていいのではないかと。
今までは過去に囚われることについては、ペシミストの特性であり、発展性がなくあまり良い精神状態のものとは描かれはしなかった。だが記憶が最良の時間を与えるなら、それを選択してもよいのではとこの映画は優しく手を差し伸べる。まさにその状態は、劇中語られる「バッドエンドになる手前の、幸せのまま終わる物語」そのものだ。


だかまあしかし、私だったらワッツの生き方を選ぶ。他人や世界との関わりでどんな出会いが待ち受けているかわからないし、どんなに良い記憶でも飽きると思うから。
装置に入っている間は、それがフェイクであると自己認識できるのだろうか?
認識できるのなら現実に戻った時に虚無感に襲われるかもしれないし、認識できなければ現実との区別がつかなくなり狂いそうで怖い。

サスペンスではあるものの、この映画は紛うことなく愛の映画であり、観客を記憶の謎に置き去りにすることはない。愛する女性の影を追いながらの男の独白、フィルムノワール風の上質な雰囲気に酔いしれられる。特に、他人のメモリーで互いを想うシーンは極上の切なさ。

また、水面が上昇した湿っぽい街の描写は新しい世紀末感を確立したといえるかもしれない。退廃的であるものの、泡沫の夢のように儚く美しい。

しかしレベッカ・ファーガソンは、銀幕上であと何人の男をたぶらかせれば気が済むのか?
少し老けたタンディ・ニュートン姉さんも恋心を抑える渋みのある演技。
そういえば、二人とも過去作でミッション・インポッシブルのヒロインでした。

M:i:III [Blu-ray]

M:i:III [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: パラマウント
  • 発売日: 2019/04/24
  • メディア: Blu-ray

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野性の呼び声 [ヒューマンドラマ]

満足度★75点

■ファンタジー色の強い動物実写もの

野性の呼び声 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

野性の呼び声 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2020/07/03
  • メディア: Blu-ray

一匹の暢気な飼い犬が、過酷な環境に放り出され、己の中の獣性と本能を呼びさまされていく過程を描いた冒険譚。
冒頭、実写の犬の表情をCGでいじりすぎていて、子供向けすぎるか・・・?と不安を覚えるも、じょじょにコメディ的な動きは抑え気味になり、こちらも世界観に慣れていった。
生来の優しさがリーダーとしての「器」として認められ、仲間から信頼され成長し、森林狼と子供を成し、いつしかその存在が伝説となるというお伽話のような展開。

ロマンがあって好みなのだが、いざハリソン・フォードと伝説の地へと旅立つ一番の山場がダイジェストになっていて、拍子抜けした部分も。散々ハリソン爺さんと犬が激流下りをする場面が宣伝されていたためか、開拓者の間で伝説となっていた土地へ、このコンビがいかにしてたどり着くまでかが丹念に紡がれるのだと期待してしまった。
そこにさえ目をつぶれば、起承転結のあるとても起伏に富んだ面白い人生ならぬ「犬生」であり、犬の目を通じて時代に翻弄され夢にしがみつく人間の悲哀もたっぷり描いた、贅沢な作品とはいえる。
ハリソン爺、ベック共に最後の場所を見つける。人生とは?と大きなテーマさえ投げかける壮大さも感じさせてくれた。

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ドント・ブリーズ [サイコスリラー・クライム・サスペンス・社会派]

満足度★65点


ドント・ブリーズ [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

ドント・ブリーズ [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2017/10/04
  • メディア: Blu-ray
■老人の欲望が妙に生々しく気色悪い


金欲しさに押し入った若者たちvs 交通事故で愛娘を失い一人寂しく暮らす老人という構図なのだが、老人の戦闘能力が高く、一転若者たちのサバイバル脱出劇となる。
唯一の問題は若者にも老人にも感情移入しにくいこと。

どうしようもない動機で侵入した若者らが叩きのめされると多少すかっとするものの、逆に主役の女の子には逃げて欲しくてハラハラする。感情が行ったりきたりで忙しい。
老人の気持ち悪い思考回路と、老人のあれを口に突っ込み「これでもくらえ」(というセリフだったかは定かではない)と反撃する場面は、生理的嫌悪感が酷すぎて記憶に残る。

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「グレタ ひとりぼっちの挑戦」で思う環境保全活動が提示する格差社会の未来 [ドキュメンタリー]

本編からは多少逸脱したことを書く。
グレタについて知人でもない限り映像以上のことは知りようがないので。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
移動手段でCO2を排出する最たるものとして旅客機のことがもっぱら攻撃されているが、庶民が飛行機に頻繁に乗る回数はそれほど多くはないだろう。私も人生で旅客機を使った回数は15往復ぐらいしかないように思う。車がないので、旅はもっぱら電車を利用する。


米国でも、
〉NPO国際クリーン交通委員会の新たな分析結果によると、アメリカ人で飛行機をよく利用するのは少数派で、年に6往復以上利用しているのは全体の12%。この人たちが空の旅全体の3分の2を占めている。(新聞より)


とある。ということは、庶民に対して年一回帰省することや、ようやっと手に入れた休暇で世界を旅してみたい思うことへ罪悪感を抱かせて自粛させるよりも、ハイクラスのビジネスマンや一部の富裕層による頻繁な渡航を制限しなければ、旅客機はより特権階級のものになり果ててしまう恐れがある。利用するごとにマイレージが貯まるより、利用する回数が増えるごとにカーボンニュートラル税を支払わせるなどの仕組みが必要なのではないか。

またグレタのように世界中の人がヨットで横断できるわけがない。あれはパフォーマンスの部分が大きいとは思うが、結局クルーやスタッフがヨット回収や人員移動のために飛行機を利用したので、批判を呼んだ。ヨットだとて、GPS機材・帆やマストにつかう素材・船体に使うカーボンや燃料など、そもそもヨットすべてがエコなのか?という疑問もわいてくる。

もし全世界の住民に、移動には船舶やヨット利用を推進したとしよう。
・搬送人数が少ない
・難破が増えてヘリや船での捜索が増える。
・豪華客船などの大型船舶が増えれば化石燃料に頼ることになる。
これらを踏まえれば、旅客機よりも戦闘機など足並みそろえて世界の軍備を減らすほうが、いいのではないか。(しかしそう簡単にはいかないのが政治の裏表)


移動を必要とせずネットで仕事ができるようになろうとも、サーバー保持のため電力消費が増える。電力が増えれば、グレタの反対する原発の見直しをせざるを得ない。
人が移動することが悪になってしまうのなら、人間は生まれながらの土地に縛られることになる。食料自給率の低い国では、当面輸入に頼るしかないだろうが、それも制限されると経済が停滞し、輸出で儲ける農家にダメージがでる。急な方針転換は食品ロスや廃棄も生むだろう。そして第三国の農業国家は貧困に陥ると働き手として児童労働に頼るため、最たる人口加速を生んでしまう。

結局のところ、何かが減れば何かが増えるのであり、人口そのものが減らなければ抜本的解決はない。人口が漸減していくのが理想だろう。

過度な環境推進は、格差社会を特権階級や国家権力が庶民に押しつける口実にもなり、危険もはらむ。
グレタ支持団体は貧困層の経済的救済策の具体例をどんどん提示していかなければ、アンチが増えるだけだろう。

しかし彼女は一人一人の意識に強烈に訴えかけることには成功した。
折しも急に国連がSDGsを推進し始めたことも、追い風になっている。

食品ロス、家電の安易な廃棄、フリマアプリの活用、農産物の地産地消、個人ができることは限りはあるが、できることはある。外来種のペットを不買し、動植物を守ることから始めることも、環境保全に通じる。

しかし来るべく食料危機に備え家畜を食すことに罪悪感を植え付け、昆虫食を進めようとしている昨今のメディアの風潮は、やや怖いとも感じる。
食糧危機が起きたとして、はたして金持ちが昆虫を食べるだろうか?
自分が富裕層なら、まず食べない。農家に金を払い、うまい肉を確保するだろう。
そして低下層の人間は昆虫を食べさせられるというわけだ。


環境保全活動そのものには大いに賛同するが、その裏で首を傾げる政策や企業活動が邁進しているのも事実。

その一つにレジ袋の削減は意味がないのではという指摘がある。
・結局ゴミ袋としてプラスチック袋を利用すること
・レジ袋はプラゴミの全体の2%でしかないこと
・マイバッグの製造過程の方が環境負荷が高いこと
・焼却炉で燃やすときに別の燃料を入れること(レジ袋の原料は原油であるため燃やすと熱効率を上げられた)

また、レジ袋有料に伴い紙袋も有料化するなど環境口実にした店の便乗値上げなどもあり、消費者は注意深く判断していく必要がある。

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