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特別展「ポンペイ」 [■ART]

ポンペイには20年近く前に行ったことがあります。
青い空と肌色の岩肌むき出しの色の街のコントラストが鮮やかだったことを覚えています。
ツアーだったので余りに広く、全てを観ることは時間的に無理でしたが、それでもところどころ残るフレスコ画や、公衆トイレ、パン屋の遺構など、まるでタイムスリップしたような不思議な気持ちになった、あの独特の空気を覚えています。


さて、今回のポンペイ展。写真も撮影O.K.。人間は不思議なことに、他人の写真を見ると自分も行きたくなってしまうものです。要は生!生の体験じゃないといけない! 彩色が剥落しているとはいえ、彫刻の技術は目を見張る物がある。滑らかさ、浮き立つ血管、筋肉の張り。 

現地の状態を再現しようと工夫された試みも。

モザイクが発見された家の間取り、その家の主の情報、また炭化したパンや食べ物と絵画の符号、推測される食生活。
またアレクサンダー大王の壁画を床にプロジェクションマッピングしたり、その壮大さの一端を何とか垣間見せようとした展示方法は、今までの画一的な美術展とは違うものがありました。
完成度の高いモザイク画を搬送するのはそれだけで、気の遠くなるようなチェックを繰り返したであろうと思います。
美しいギリシャ彫刻を模範とした滑らかな大理石の彫刻群は、彩色が剥がれ落ちたことを考えても尚、神々しさを失わない。むしろ、余計な装飾がない現在の状態が、理想的な肉体美と自然美を堪能できてよいのかもしれません。
その中で一際異彩を放つ「ヘルマ柱型肖像(通称「ルキウス・カエキリウス・ユクンドゥスのヘルマ柱」)」。
解放奴隷から成功を手にした男性ですが、なんと柱の台座に乗ったトルソーの柱の下に、男根がついているのです。まるで蛇口…!
しかもそれについての解説はいっさい無し。しかも、図録にも解説無し。
しょうがないのでネットの力を借りると、ある説が目に留まりました。
「古代ローマでは短小包茎」が賢い男性の象徴で美徳とされたとのこと。
なるほどね~~。しかしそれは、本意の裏返しかもしれませんね。
全体的には大きく分けて彫刻、アクセ、モザイクと いう分類でバランスの良い展示だったと思います。
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市場の様子
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女神アフロディテとクピドも人間の母子のよう
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炭化したパン
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タコ焼き器…ではありません。ケーキ等の型
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女性の膣内を確認する医療器具
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こちらはパネルですが、ポンペイくん本人もいましたよ

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ギフテッド [ヒューマンドラマ]

満足度★85点

■こどもの気持ちは尊重されないのか

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  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2018/10/17
  • メディア: Blu-ray
いつもこの手の映画を見ると思うことなのだが、子供の気持ちは尊重されないのだろうか。
アメリカでは両親とも実親なのに親権が剥奪されて、子供が里親に出されることもあると聞く。
誰かに通報されてからなのか、飲酒運転や書類送検など軽犯罪の前科があるから審査されるのかそれは知らない。
今回は自分の成し得なかった夢の実現を子供に強制し、人間らしい生活を奪った女性イブリンと息子である主人公フランクとの確執が軸になり、スリリングな法廷劇としても発展するが「こどもにとって何が一番幸せなのか」がテーマになっていることは変わらない。

イブリンはフランクの姉にスパルタ教育と完全な監視下に置き、青春時代と人間らしい生活と幸せを奪った。
姉は娘メアリーをフランクに託した後、自殺。
メアリーに天武の才があることを見抜いたイブリンは、メアリーの親権を奪おうとして息子のフランクを訴える。

とここまで書いてみると、イブリンのとんでもない人間性がわかるのだが、ここまで彼女を駆り立てたものは何だったのか。自分の考えが皆を不幸にすると認めない頑固な姿勢と、自分の成し得なかった夢を自分の血をついだ者の手で成し得たいという欲望、そして世間からの承認欲求、娘への過剰な期待。それらすべてだろうか。

きっとイブリンも自分の人生の過ちに気がついていたのではないだろうか。
しかし認めたら最後、その虚無感に自分が飲み込まれてしまうのを感じ、鉄の意志でその迷いを塞いだのではないだろうか。自分の子供に天武の才があったとしても、監禁して子供時代にしか感じることのできない情緒を奪うことは許されない。感情を自由にできる時代に抑圧すれば、人間らしさの欠如を生むことは、想像に難くないはず。 実はイブリンが望んだ方程式を解いていた姉。
「母親が死んでからそれを公表して」とフランクへ残した遺言に、彼女の心に負った傷を思う。
彼女はきっと、本当は誰よりも母親に認めてもらいたかったけれど、同じくらい憎んでもいたんだろう。
誰も幸せじゃない。誰も幸せにならない、なぜここまで家族を追いつめられるのだろうか。
イブリンに呆れを通り越して哀れみさえ感じた。親権の話に戻る。

他人が家族関係のことを把握するのは至難の業だけど、親に虐待されているかどうかは、注意深く子供を観察し、会話すればわかるのではないだろうか。親と引き離したときにほっとした様子を見せたり、逆に戻りたくないと怯えた様子をみせたり。
今回メアリーはフランクと引き離されて泣いていた。こんなに愛着をもっている相手と引き離して、なにが幸せなのだろうか。安心できる場所が居場所なのではないだろうか。
法は誰から何を守るためにあるのだろうか。
メアリーの水準にあった教育も、こどもらしい生活も両方を与えよう。
フランクの最後の選択が、最初からベターだったんだと思う。イブリンは最初からお金を援助すればいいだけ。
人って簡単なことに遠回りする。子供に幸せを与えるのは難しいけど、そもそも大人が子供の気持ちを無視しすぎだと思う。現実社会においても。

黒人のいい助言役が板に付いたオクタヴィア・スペンサーが、クリス・エバンスの熱演を支える。

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オペレーション・ミンスミート [戦争ドラマ・戦争アクション]

満足度★85点

■遺体に与えた嘘の人生と、戦時下でのリアルな人生が交錯し小説のような面白さ
ポスター画像

味方さえも疑わなくてはならない状況下でナチスを欺くことができるのか 第二次大戦中、「ナチスを欺くために偽造文書を持たせた遺体を流す」というイギリス政府による奇抜な作戦が行われた。
名付けて「ミンスミート(ひき肉)作戦」(それにしても生々しい作戦名だな)。

これが実話であり、さらにはあの009の生みの親、イアン・フレミングが提唱した作戦だというから驚く。
報道されているのはほんの氷山の一角で、世界の上っ面の茶番の1%しか知らないんだろうな、市民の私たちは。ということを否が応でも知らしめられる。
中立国のスペインに存在するドイツ人スパイに、なんとかして「偽の攻撃対象(ギリシャ)を書いた機密文書」を目撃させなければならない。連合軍はその裏をかいて、シチリアに上陸したい。
スペインにはイギリス諜報部の息のかかった三重スパイと、その三重スパイを二重スパイと信じている勢力、そして「反ヒトラー」勢力もウロウロしている。とはいえ、イギリスは敵国のことをまるで知らないわけではなく、MI5はスペインにいるドイツ人スパイのことを詳細に把握している。
そのスパイを暗殺するなどはせず、敢えて泳がして、必要な情報与えたり隠したりするから(不謹慎だが)諜報戦は面白い。
三重スパイは女も男も相手にし(彼が一番活躍したのではないだろうか)、まさに伏魔殿。
そして主役の一人モンタギューにも、スパイ疑惑がふりかかる。
弟が共産党員との噂があり、恋敵ということも相まって、同僚のチャムリーは猜疑心に陥る。
母国で物理的に離れた場所の敵への策略を練りながら、仲間をスパイせねばならない悪条件に加え、更にはなんとレストランのウェイター、テッドが実は謎のスパイだったことも判明する。
モンタギューは結果白だったが、作戦は最後まで成功したのか不確定要素が多く、終始ハラハラさせられた。

チャーチルのセリフで、スパイ活動の渦に飲み込まれると、いつのまにかめぐりめぐって自分の尻を見ている」というようなのがあったが、諜報活動だけに囚われていると視野狭窄になり、何も決断できなくなるのは事実だろう。だからこそ、チャーチルはミンスミート作戦が成功したか否かに関わらず、成功したものと信じてシチリア上陸を決行する。
この後にチャーチルの承認も得てアメリカが日本に原爆を落とすことを考えると手放しで喜べない自分もいるが、リーダーシップのなんたるかが、垣間見えた気がする。

この映画には二つの噓の死体がある。 一つは作戦に使われ、上官に仕立てあげられた遺体。
もう一つはチャムリーの戦地で行方不明になった兄。
多数の命を左右した死体と、一人の母親の心を救った死体。
とても皮肉だ。
スペインに眠るイギリス人将校の墓にそんな秘密が隠されていようとは、誰も夢にも思わなかったに違いない。

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ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の法化 [戦争ドラマ・戦争アクション]

満足度★55点

■ロシア人の自虐史観も交じる

ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火 [Blu-ray]

ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2020/04/24
  • メディア: Blu-ray
ドイツの戦車、ホワイトタイガーはまるで亡霊のように突如現れて襲ってくる。
これは予期せぬ争いや災いは、預かりしらぬところで起こるということを示唆しているのだろうか。
終盤、ヒトラーの口からロシアの自虐史観的な台詞が飛び出す。

「ソ連という国は陰気で暗い。あんな国はヨーロッパではない」と(その話を聞いているシルエットの男は誰なのだろうか) 作り手のロシア人脚本家やスタッフがそう思ってるからなのだろうけど、少し悲しいね。

ロシア人=スラブ民族なのだから、もし西側ヨーロッパ人が割とそのような価値観を共有してるとしたら、ロシアが西側とは違う、と頑なになるのもわかる。
生のロシア人とは知り合いではないが、フィギュアスケーターが意外とユーモアに溢れた演技をしたり、サービス精神溢れるパフォーマンスをするので、そんなに真面目で陰気にではないのでは?と思ったりもする。
話としては、戦争に膿んでいるのか、人間に絶望しているのか、諦観した雰囲気が終始漂い淡々とすすみそして終わった。戦車同士の激突も、本物を使っているとはいえ、迫力はそれほどなかった。

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