バーニング・オーシャン [ディザスター・ディストピア]
■爆発シーンの臨場感が凄い
実際に起きた事故、生存者の体験を軸に映画化。 採掘稼働の準備が日延べし、損失をくい止めたい親会社から派遣された二人、安全性を重視したい現場の下請けの人間、早く陸へ帰りたい石油タンカー会社の人間と、おのおの思惑がすれ違う。 結局、安全性を軽視した親会社からの意見が押し切られ事故に至ったというよくある人災の話なのだが、親会社側がまるきり計測データを無視したようにも思えず、今回は関係者全員の予想を超えた自然のパワーが悲劇を生んだ気もする。 冒頭、エンジン不調や悪夢など幸先の悪いエピソードでこの先の不幸を匂わせる演出や、隔絶された場所で家族のように暮らす作業員たちの何気ない会話や戯れを散りばめることで、各々の人生に思いを馳せさせる演出もあるが、とにかくこの映画は爆発と火災の臨場感の凄まじさが肝。 CGとは思えない火のうねりは、どうやって再現したのか?と思うばかり。一度暴走したエネルギーの恐怖を体感できる。 ケイト・ハドソンが妻役のちょい役。久し振りに見たカート・ラッセルが渋い。
パーフェクト・センス [ディザスター・ディストピア]
パーフェクト・センス スペシャル・プライス [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2014/12/02
- メディア: Blu-ray
主役は感染病研究者ですが、蘊蓄を語る場面はほぼ無いですし、次々襲う奇病に対しては全くの無能。奇病SOSは脳の病気だと思わせますが、 脳外科医なども一切登場しません。
そういったことよりも、人の五感の重要性を詩的に描き、徹底的に主役二人の周囲の世界だけを丹念に描くことで、 何気ない生活の美しさを観る者に再発見させようとしています。
失っていく五感は一つずつ感情に結びついており、最後に残されたのは愛したい、愛する人に触れたいという欲求。 触感さえ失ったときに側にいて欲しい人がいないなんて、暗闇に一人いることと同じでとても悲しく恐ろしいことです。映画からは、時を惜しみ人を慈しみ今を大事に生きてください、というメッセージを感じました。
『ブラインドネス』など似たような感染パニックものは分断や暴力を、『ワールド・ウォー・Z』などゾンビ系ものは恐怖を描く類なので、 徹底して喪失と慈しみを描いたこの作品は、感染ジャンルの中では稀有な存在といえます
ジオストーム [ディザスター・ディストピア]
フィフス・ウェイブ [ディザスター・ディストピア]
フィフス・ウェイブ [SPE BEST] [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- メディア: Blu-ray
■途中から茶番劇
シン・ゴジラ [ディザスター・ディストピア]
■自分の直感を信じ見に行かなくて良かった
これはもう喜劇ですね。ゴジラに脅威を感じることができなかったので、パニック映画として中途半端だし、政治的批判や日本人への痛烈な皮肉が込められたサスペンス的な緊張感は、石原さとみの登場で喜劇になった。
ゆえにこの映画のテーマがぼけ、どこで喜んでいいのかわからない。
ほかにも、
・ゴジラのVFXがひどい。
・ゴジラ出現理由をあえてぼかしているのがあざとらしい。
・随所にエヴァ。ヤシオリ作戦が「ヤシマ作戦」の音楽そのまま、ゴジラの初めての咆哮がエヴァ初動機発動を彷彿とさせるなど、エヴァをゴジラでやりたかっただけ。
各評価を具体的に書くと
・このVFXをもってしてハリウッドに対抗できたと評価している邦画界がちゃんちゃらおかしい。何かと批判されるエメリッヒ版ゴジラにも劣る。エメリッヒ版はポップコーンムービーとしては及第点。
・ラストの「尻尾にたくさんの人間らしきもの」に対して様々な考察がされているが、シンプルに、劇中で言及されていた「ゴジラは分裂して増殖する可能性」があることを示唆したものだと私は思う。
ともあれ、「謎を放り込んでおけばみんな喜ぶでしょ?」 と言わんばかりにとってつけた結末に嫌みを感じる。
・ゴジラが動き回ることがほとんどないので、危機感を全く感じられない。ゆえにいくら長谷川が熱演しても、滑稽に映る。
仮に制作陣が「政治サスペンスなんだ!」と主張するのであれば、モチーフがゴジラである必要は無い。日本への皮肉を内包しつつ、現状打開するため奔走する群像劇を見たいのであれば、【東京原発】などで十分。
・「シン・エヴァンゲリオン」を作りたいが延期していることに対して、ファンにお詫びとして作った作品としか思えない。
・石原さとみのトゥーマッチな演技はそれはそれで面白いが、「私が大統領になったら」発言にはずっこけ。
あそこで微妙なバランスで保たれていたギャグの均衡が崩れた。わざとか?
何となく全体的に、日本の観客がどういった点で喜ぶのか実験しているような、また、エヴァファンを手のひらで転がしてるような、嘲笑が垣間見える気がするんだよね。うまく言えないけど。
牧博士の自殺の謎がなんやかんやと騒がれていたけど、単にゴジラを盗んで日本政府に恨みがあったから東京湾に沈めて、奥さんの後を追っただけだと思うけど。
劇場公開時、前情報、トレイラー、それら総合的に判断して劇場に見に行かなくてもいいと判断したが、それは正しかった。
AIR エアー [ディザスター・ディストピア]
どちらかというと、ノーマン・リーダスよりも、サイモン・フンスーの方が主人公。
リーダスがカプセルのなかで死にかけた「空白」の時間も、フンスーが幻覚をしょっちゅう見ていことが描かれてしまっているので、それほどサスペンスを掻き立てられない。
二人で生き延びることを最後まで諦めないか、カプセルをめぐり殺し合うか。
相棒を信じきれなくなったリーダーズが結局はフンスーを襲うが、やはり最後の最後で譲る展開になってよかった。元々憎しみあっていないのだから。
外部に謎の生物がいたりとか、コンピューターの反乱とか、小賢しいことを一切しなかったことが潔く、二人しか出てこないことが功を奏して、いろんな意味で本当に寂しさを感じた。
たった二人なのにそのコンピューターに管理されている状況から抜け出せない「管理社会」であることも皮肉。結局はフンスーが救われる顛末でよかったと思う。
さて、あれから何年たったのか? ラストの様子から推測してみた。半年で二時間しか起きない⇒彼が髭まみれで登場したことから、「解凍され」起きている時間で一年経過したと仮定すると…。
●フンスー起床時間が四時間=実世界一年だから、フンスー起床時間が24時間=実世界…2190年! 合ってる?
汚染がなくなり、科学者たちが目覚めた世界はどうなっているのか…自分なりのシナリオを想像するのも一興。
トゥモロー・ワールド [ディザスター・ディストピア]
満足度★78点
■クライマックスのワンカットに衝撃
少子化どころか女性が子供を妊娠しなくなってしまった近未来。
世界最年少は18歳、とても貴重な存在であるのに、その子が殺害されてしまったというニュースが駆け巡る、絶望的なオープニング。
緩やかに死ぬまでなすすべもなく、命のカウントダウンを皆で数えているような閉塞感。
テロや紛争がはびこり、世界が壊滅にまっしぐらに突き進むなか、英国だけが辛うじて秩序を保っている。
だがそんな英国にも移民が押し寄せ、うかうかしてはいられない。
主人公のクライブ・オーウェン演じるセオがカフェで遭遇する爆弾テロは、リアル過ぎて恐ろしい。
官僚でもあるセオは、反政府組織に属している元妻のジュリアン(ジュリアン・ムーア)にあるものを託される。
それは「妊娠した少女」キー。
大変な奇跡であるにも関わらず、手放しで喜べる状況にはならない。
政府に伝えれば、明るいニュースを振り撒いてもらうことができて、世界は希望に満ちるはず--そんな単純な図式にはならないのも、また人間の愚かさなのだ。
キーを政府との交渉素材にしようと、反政府組織で内部分裂が起きてしまい、セオとキーは逃げざるを得なくなる。
セオとキーを匿い、殺される友人をマイケル・ケインが好演。
彼はクラシックな物をこよなく愛していたが、それも無惨に破壊された。
人間はその無知のせいで、いくつ価値あるものを破壊してきたのだろう。
セオとキーは、存在すらあやふやなヒューマン・プロジェクトという組織をめざして、逃避行を続ける。
はっきりいってセオは、強くもないし特別なスキルがあるわけでもない。
だがキーがその本能で信頼できると断言する誠実さを、クライブ・オーウェンがしっかりと演じきる。
ヨレヨレでヨロヨロ、そんな彼が突き動かされる、生まれなかった命への思い。
ラスト、素晴らしいワンカットの戦闘シーンの喧騒ののち、人類最後の子供がもたらした奇跡が深く深く胸を穿つ。赤ちゃんというのは、脆弱なのに、なんて強いんだろう。
未来への希望を抱いたままジュリアンの元へ逝ったセオの姿に、深い余韻が残る。
※ちなみにラストのワンカットは、ワンカット風に編集でつなげたそうですが、2015年の【バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)】に先駆けて同じような手法で撮られていたという事実に、私の中で更に評価があがりました。
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- メディア: Blu-ray
八甲田山 [ディザスター・ディストピア]
★満足度90点
■自然の猛威の前に上官の愚策に翻弄される兵士達
この、雪、雪、雪にまみれた本作は、見ていてとてもしんどいが、何度でも見返したくなる。
撮影2年、本物の暴風雪のなかで敢行されたロケにより、本物の疲労や恐怖を俳優に体現させたという。
失わなくてもいい命を、あたら無惨に散らしてしまった兵隊達の無念さが俳優陣に憑依したようで、確かに鬼気迫っていた。
軍隊において上層部の判断に従わなくてはならないのは東西各国どこも同じだと思うが、特に日本人は何かを途中で 「やめる」という英断がなかなか出来ない質なのではと思う。
話は横道に逸れるが、もんじゅのドキュメンタリーでも同じようなことが関係者の口から洩れていた。「誰もが無駄なのではないかと思い始めても、それを口にしない。今までの時間が無駄になるから」 それは、言い返せば誰も失敗の責任を取りたくないという逃げの現われで、日本人の悪い特性だと思う。
兵隊にとって「やめる」というのは、卑怯に置き換えられてしまうのだろうが、無謀というのは勇気と違う。 統率の乱れ、指揮系統の乱れが命を左右する。
ここで、あそこで、ああしておけばの連続で見ているこちらも苦しくなる。たかだか訓練で死んでしまっては元も子もないじゃないかと、本当に口惜しい気持ちになり怒りさえ湧いてくる。
「白い地獄」を前にした虫けらのような人間。神田大尉の言葉を借りると「雪とは一体なんなのだ」と、雪に自然に圧倒された作品だった。
これはもう理解しようがしまいが、学校でも見せるべき作品。自然への甘い認識、無知な上層部の横やり、 組織の悪しき面などなど反面教師として学ぶことがたくさんあるし、また、これほど真剣に作られた映画があったことと、この物語を受け継いでいく重要性も伝えていくべきだと思う。
日本沈没 [ディザスター・ディストピア]
お気に入り度 ★★☆☆☆
ひどかった。
盛り上がりがない。
主人公が淡々としすぎ。
どうせやるなら、政府に草薙たちが海底爆破の必要性を訴えるがそれでも一蹴されて、「俺達でやるしかない!」と勇気を振り絞り立ち向かう、みたいな設定のほうが、ただ闇雲に草なぎをフラフラさせるよりかは説得力があったのでは。 つーか、皆が移動に大変な労力を割いているのに、何故彼だけフラフラ遠距離移動できるの?
コウが抱いて、と言って断られた時に「なんで?」 というシーンに笑った。
ほんとなんで?だよ。
死ぬ気なら抱いてやれよ!
乙女心がわかっちょらん。
んでお腹には彼の子が宿っていて終わる、くらいとことん美化するなら美化すればいいのに。