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宮崎駿監督作「君たちはどう生きるか」をこう解釈 [アニメ]

満足度★70点 

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■暗喩に満ちているが意外とメッセージはシンプル

映画「メッセージ」とテレンス・マリックの「ツリー・オブ・ライフ」とキューブリックの「2001年宇宙の旅」を足したようなメッセージ性と、背景はルネ・マグリットの絵画や飛鳥の石舞台のような様々なメタファーに彩られた、美しい映画でした。

ただ、監督が伝えたかったメッセージが上手く描き切れたのかというと、消化不良だったのでは…?という気もします。
でも私はこの映画のことは嫌いではありません。

●各キャラクターの心情
マヒトは、小さな嘘をつく矮小な自分を認めることができて、やっと欺瞞と暴力が渦巻く世界と対峙する決意をしたんですよね。母親の死を乗り越えていない自分の心、そして継母の母胎と脈打つ命。そこに一種のエロスとうしろめたさとないまぜになった感情がうまれ、ナツコにも素直に対峙できなかったのではないでしょうか。
ナツコはおそらく姉(マヒトの母)に対して引け目があって、姉の授かり子のマヒトと向き合う責任から逃れたかったのではないかな。
ヒミは、自分が若くして死ぬことがわかっていても、マヒトをこの世に産むことを選んだ。マヒトと出逢った異世界での期間が、きっと神隠しにあった1年だったんでしょうね。この辺が、個人的に子供が死ぬことがわかっていても子供を産む決断をした「メッセージ」の主人公を彷彿とさせました。ヒミが「火は怖くない」というセリフを言いますが、火は生命を燃し、また新しく命を生む役割もあることからでしょうか。

私たちがこの世に命があるのは、絶対ではない。キリコのいた海は子宮で、白い生き物は精子。らせんを描くのはDNAそのものですね。
もしかしたら私たちは、あの世にいるときに、誰かに選ばれて生まれたのかしれないし、自分で選んでこの世に産まれたのかもしれない。
陳腐な表現ですが、生命というのは神秘で、人間だけではなく数多の命は全ておろそかにしてはいけないよという、メッセージを感じました。

そこに気がつくまでのマヒトは、劇的な変化はみせません。そこにもどかしさや物足りなさを感じる人もいるでしょう。セリフは極力そぎ落とされ、ほとんどのシーンは抽象的です。

●大叔父
大叔父が持つ隕石は、地球に生命をもたらした象徴と受け取りました。大叔父がもっていた13の積み木の数字「13」は、キリスト教でいうところのユダで、すなわち「神に背を向けた男」ということを連想させます。大叔父は、現実世界では行方不明になったままなので、隕石を通じてこの生命の渦のような世界で、神ではないのに神のような力を持ってしまった者なのかもしれません。戦争を経験した大叔父は、苦しみや悲しみを生む人間界そのものの行く末を、子孫に託したかったのかな?と思われます。

インコは…なぜインコなのかがわかりませんが、日本においては恐ろしい外来種なので、生命のバランスを欠くの象徴でしょうか(笑)?

パンフレットもないし、私の推考が正しいのかどうかはわかりません。この映画の背景にある全ては、監督の頭の中だけにあるのでしょう。

ただ、そもそものメッセージはシンプルなものの、そこに至るまでのストーリーが面白いかというと、それほどでもありません。ただ、最後まで観ることで、じわじわとこみ上げるものがありました。 特に場面場面で思わせぶりな表情を見せるキャラクターの繊細さ、和洋折衷なのに美しい色彩の世界は、もう一度みたいと思わせる中毒性があります。

ちなみに全く子供向きではないと思いますし、本の「君たちは~」の筋書きとは全く違ういます。ただ不思議なものを不思議だと素直に受け止める人の心には、残りやすいかもしれません。

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神々の山嶺 [アニメ]

満足度★98点

神々の山嶺 豪華版BD [Blu-ray]

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■潔く、そして深い

谷口ジローの漫画は未読なのでどれほど漫画に忠実なのかはわからないが、原作と比較すると、女性がらみのエピソードを一切廃したことで陳腐になる危険を回避し、アニメながらも潔くシンプルで深みがある作品になったと思う。
マロリー、長谷川恒夫など実在の人物を絡ませ、羽生がそこに生きた人間だと錯覚させる。

マロリーも羽生も深町も、登頂できたかどうかは、わからない。しかし劇中の台詞のように、それはどちらでもいいこと。たとえ登頂していたとしてもしていなくても、彼らはきっと永遠に頂きに挑戦し続けるだろうから。
それは突き詰めていくと死に向かうわけだが、挑戦をやめたときは精神の死を意味するわけで、いずれにしても同じ道に向かっていることだといえるだろう。山に魅せられた者の宿命を、これだけ端的に、哲学的に描いた作品はないのではないか。
足を滑らせたときの体の重み、ロープのきしみ、雪崩の落ち方、ビレイデバイスのカラビナがかかる瞬間など、重力の描き方とと筋肉の動きがとてもリアルでアニメだと思えない。

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神々の山嶺 文庫版 コミック 全5巻完結セット (集英社文庫―コミック版)

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この世界の(さらにいくつもの) 片隅に [アニメ]

満足度★80点

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■隠れた優しさに心震える

私は原作を読み、公開時のバージョンは未見。160分もありながら、それでも原作からこぼれている細かなエピソードはあり、この原作の奥深さを逆に感じることとなった。あくまですずという女性の、戦時下の他愛ない男と女の話でありながら、りんとすずというこの時代の女性の選択肢の無かった生き方を対照的に描き、最後は輪廻転生のような宇宙観を感じさせもする。

すずが西瓜を与えた屋根裏の子供はりんさんかもしれなくて、そのりんさんは周作の隣にいることはできなくて。
はるみちゃんは死んでしまったけど、名も知らぬ子供が新しい家族になって。
誰かが、誰かの場所だったところにおさまって。
そう簡単に居場所が無くなったりしないよ、というりんさんの声が胸を締め付ける。誰もがそうではないことも含めて。

りんさんも、ピカドンで息子を亡くし隣人の女性も、両親と腕を無くしたすずも、あまりにも失ったものへの執着が無くて、それなのに何かを諦めている様子でもなくて。
戦争は人に悲しんだり後悔したりする暇も与えず、どんどん生活の糧を奪っていく。そんな状況を受け入れるしかないけれど、でも日々の営みを丹念に過ごしていくすずたちが、健気で胸を打つ。
すずは人生の何一つも自分で決めていないように見えるけど、何でも受け入れてしまうしなやかさに惹かれた人たちから、選ばれているのかもしれない。
戦時下のごくごく普通の家庭の生活をこんなに丹念に丁寧に描いた作品は珍しい。戦場での兵士のドキュメンタリーはあまたあれど、その裏で極貧を強いられた一般家庭での生活はあまり目立たない。
「配給」「バケツリレー」そういったステレオタイプの映像以上のやりくりは、こちらが想像する以上のものがあった。日本全体がこんなにかつかつの生活をしていて、よくご先祖達は耐えてきたなと。
すずの腕に母を見出した子どもは救われたが、実際は戦争孤児としてひどい目にあった方たちもたくさんおり、そのドキュメンタリーを見たら、これが同じ人間の所業かと唖然としたことがある。 だからこそ、フィクションであろうと、最後に描かれたすずたちの選択に、胸が震えた。

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ファンタスティックMr.fox [アニメ]

満足度★60点


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■ストップモーションでもアンダーソン節


普段ストップモーションアニメは好んで見ないのだけど、ウェス・アンダーソン監督だからつい見てしまった。
最初はなかなか入り込めなかったが、次第にこの監督の世界に引き込まれていった。妙にリアルな毛の質感や眼球を持つ動物たちが、「不気味の谷間」を通り越して可愛いく思えてくるから不思議。
ストップモーションのかくかくした動きや、静止した表情のアップに妙な味わいを感じて、癖になる。特に人間に雇われたガンマン風ドブネズミの動きが最高。ついでになんで狐と等身大なのよ。


話は動物と人間の騙しあいのいたちごっこなので大したことはないが、細部まで造りこまれた背景や小道具を観察するのが楽しい。この監督、列車が好きなんだろうな。


ディズニーやピクサーのように滑らかすぎる動きのアニメばかりが世を席巻しているので、たまにはこういう手作り感たっぷりの不気味な絵本のようなアニメも新鮮。想像力が刺激される。


最初はなんでウェス・アンダーソンがアニメをオファー?と思ってましたが、近年【犬が島】が公開されて監督自らが好きだったんだねと納得。


また、声優陣にジョージ・クルーニー、メリル・ストリーブ、ビル・マーレー、ウィレム・デフォーなど豪華な俳優たちが起用されていて、驚いた。


犬ヶ島 [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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バケモノの子 [アニメ]

満足度★45点

バケモノの子 期間限定スペシャルプライス版Blu-ray

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  • 出版社/メーカー: バップ
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■全編がト書きのよう


ところどころ唐突かつ強引な場面が多く、それにより全体的に説教くさくなってしまった。
なんでしょう、監督の中では消化しているのだろうけど、具体性のないト書きのような世界。
リリー・フランキーと大泉洋のキャラはアクション漫画で出てくる「説明キャラ」で、脇役としていたほうがいいのだが、いてもいなくてもいいような存在に落ちぶれている。
展開が早いのは映画の作りとしては問題とする点ではないのだが、九太が突然勉強に目覚めたり、楓が一郎彦に説教たれる場面。
前者は九太の心の縁に人間界への郷愁が表される場面がチラリともなかったし、後者は一度も会ったことがないあなたに、一郎彦の何がわかるの?と言いたくなる。

人間界とバケモノ界をつなぐ道が簡単に行き来できるのは、犬夜叉やハリポタなどもそうだし、まあいいのだが…この作品に関しては、それにより九太が「どちらの世界を選ぶのか」という葛藤が曖昧になってしまった。

一見優等生に見える一郎彦。正体を誤魔化され続けたことで、知らず知らずのうちに劣等感を宿してしまったという少年の気持ちはわかるが、ダークサイドに落ちた時のあの威力は凄すぎませんか(笑)。
その前に、あの300円ショップで売っていそうな被り物はないでしょう(笑)。登場した瞬間に、人間だとすぐにわかってしまいました。いくらアニメが子ども向けとはいえ、子どもでもわかるんじゃないだろうか…。

そもそも、「人間は闇を宿す」とバケモノ界でさんざん警戒されているにも関わらず、熊徹は何が目的で人間界にきていたのだろう。人間界で弟子を探すこと自体が、おかしくないですか。

たとえば人間界にも九太の逆のような「はぐれバケモノ」なるものがいて、バケモノ界で弟子が見つからない熊徹がそれを探しにきたのならわかりますが…一郎彦を見つけた猪王山もしかり。

熊徹が九十九神に転生して、九太の闇を埋めるっていうアイデアは、抽象的ながらも胸を衝く展開でしたが、いかんせん全体が…荒いというよりも浅かった。
九太に寄り添うネズミのような化け物とか、闇を宿すという台詞とか、ありふれた設定なのですが、どうしてもジブリやSTAR WARSを連想させられて、既存の作品を掻い摘まんで繋げたような既視感を拭えませんでした…。
それはそうと、本当のバケモノは人間、というオチですが、バケモノはダークサイドに堕ちないんですかね。

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コクリコ坂から [アニメ]

★満足度65点

コクリコ坂から [DVD]

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  • 出版社/メーカー: スタジオジブリ
  • 発売日: 2011
  • メディア: DVD
コクリコ坂から 横浜特別版 (初回限定) [DVD]

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  • 出版社/メーカー: スタジオジブリ
  • 発売日: 2012/06/19
  • メディア: DVD

■まっすぐな少年少女の恋物語

1960年代の雰囲気はよく知らないが、この映画を見るに限り、全体的に前向きで幸福感のある時代だったのだろう。
と、話の中身よりもこの時代風景を楽しむことから始まった。
ちょっと調べてみると、今作の設定された時代は、「ロシアより愛を込めて」が上映された年、鉄腕アトムの初回放送が始まった年らしい。
なにか、そこにすごい隔たりというか、洗練された娯楽という点でのギャップを感じてしまう。

本題に戻ると、もう最近ではジブリ映画の中でしか存在しないような、おなじみの真っ直ぐで清々しい少年少女たちが登場し、こちらも素直に応援したい気持ちになる。
父を亡くし母不在の中、下宿を一人切り盛りしている健気な少女・海ちゃんの初恋が、「実は恋した人は兄でした」という悲劇にならないよう、ドキドキして見守りました。

しかし「兄でもいい、私風間さんが好き」と言い放つ海ちゃんに、従来の古風な考えにおもねらない新しい風を感じます。風聞を気にする男性に対し、恋したら一途な女性の方がこうなったら強い。
結局、風間は兄ではありませんでしたが、例え兄だったとしても二人は一緒になるのではないでしょうか。
自分たちの想いを殺さないことが、戦争で死んでいった父達の手向けだとでもいうように。

それにしても時代なのか、カルチェラタンとかコクリコとか、横文字をぶら下げれば格好いいといわんばかりに恥ずかしいネーミングがバンバン登場。
カルチェラタンを守るために防火用水槽に飛び込むという「伝統の」パフォーマンスを行ったり、大掃除で取り壊しを防衛したり、理事長に直談判にいったりと、青春してるなぁっと、眩しすぎる風景でした。


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かぐや姫の物語 [アニメ]

★満足度85点

HP…http://kaguyahime-monogatari.jp/

■ストーリーを凌駕した素晴らしい絵

様々な評でハイジとの比較もよくされるが、ハイジとの違いは、かぐや姫が何かしらの背徳感をもってこの世に生まれてきたというところだろう。
映画では、その背徳感の根源である「犯した罪」の部分が、話の展開上あまりにあっさりしているので、「え?そ れだけなのか」とストンと腑に落ちない部分もある。
パンフレットを読むと、ネタバレどころではない丁寧な解説が記載されているので、気になる人は買ったほうがいい。
その理由を知らなければ、かぐやの振る舞いは多少意固地に映るはずだから。

地上への憧憬ゆえに、他人の封印した記憶を揺さぶってしまったことが罪。
ゆえに、地上の穢れを体験させることがかぐやへの罰。
だが、かぐやは罰だとは思っていない。
しかし彼女の幸せは、周囲の「欲」によって変化してい く。
この欲こそが、天上でいう穢れなのだろう。

「生き直す」ために生まれ落ちたにも関わらず、天上と同じような世界に押し込められそうになった「拒絶」の心の叫び。
今までのジブリ作品のヒロインと違うのは、プラスではなく拒絶の意志が貫かれているところだろう。
彼女が古里に疾走する、あのほとばしるエネルギーは、怖い。
行き場のない気持ちの力は、彼女の世界を歪めてしまった。

たとえ、かぐやの「なぜ」が明かされても、この映画の魅力は全く損なわれはしない。
かぐやが婆の腕の中で何かを発見するたび、余白が埋まっていく。
一枚一枚丁寧な水彩画はこれこそアニメ(だけどアニメと 呼ぶにはしのびない美しさ)。
かぐやが喜びとともに成長していくように、観客も自然の中を生き直す。
かぐやはどうあっても「帰りたい、死にたい」とは思って はいけなかった。
思わなければ、何か打開策はあったかもしれない。
天上に帰るかぐやはまるで死人のようだった(天界人が仏陀に酷似していることもあって)。
平穏ということが、ただ心をなくすという無味乾燥な場所だとしたら、天界も冥界も変わらない。
自然賛歌とともに、ジブリ作品に共通の「生きろ」という メッセージが盛り込まれているのだと思った。

ただ、かぐやが余りにも自分のことばかりで、周囲への配慮が足りないのは気になりました。ヒロインに感情移入する映画ではなく、彼女の目を通して人と自然の関係をしみじみと感じる映画と言えるでしょう。

余談ですが、地井さんのアテレコがあまりに上手で感情豊 かなので、本人が他界したこともあり、聞いていて泣けました。


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風立ちぬ [アニメ]

★満足度85点

HP・・・http://kazetachinu.jp/

風立ちぬ [Blu-ray]

風立ちぬ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: スタジオジブリ
  • メディア: Blu-ray

主人公が結核の妻の前で煙草を吸うとか、そんなことが取り沙汰された記憶も新しいが、そんな瑣末なことで揚げ足を取るのは下らない。

この作品はジブリお得意の細かな人間の所作を丹念に拾うことで、生々しさというか、五感を非常によく使わされて、観るというより体験させられているように感じた。

関東大震災の中で、濡らした手拭いを絞って水を飲ませるとか、地震のあと「汽車が爆発する!」と早合点し蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う人々や、神社のある高台にひしめき合い大八車に荷物を詰め込み疲れきった人々の頭上に吹く旋風。
人間だけでなく、菜穂子の描いたキャンパスが突風に倒されるシーン、大海原のように草むらが揺れるシーンなど、風の表現が素晴らしい。

また、監督自身のように、戦争には反対だが飛行機(戦闘機含む)などの戦争のもたらす副産物に惹かれるという人間の矛盾が、二郎しかりそこここに反映されていたように思う。
たとえば書物を火事から救うため運び出した横で、疲れたからと一服する学生。
菜穂子との幸せな時間を裂く二郎の戦闘機づくりへの執心。

時に矛盾に満ちた行動をとるのが人間で、大きな出来事が起きた中でも日常の振るまいをすることで平静を保とうとするというか、結局普段通りの行動をとるしかないというのが、人間臭さというものではないかとつくづく感じた。

件の議論となった煙草シーン、菜穂子の思いが伝わり、私にとっては胸が詰まる場面だった。
ちゃぶ台で仕事をしている最中に、煙草を吸いに行きたいからつないだ手を放して、と二郎は頼む。
だが、菜穂子は少しでも触れていたいから、そこで吸って、という。
菜穂子は彼の重荷になどなりたくないし、普通の生活を少しでも送りたい。
「普通の」というのは二郎が始終彼女を心配して、布団の中でずっと寄り添うことではないのだ。

二郎は夢にまで見た飛行機作りに携わっている。
戦争が起きて、日本軍に必要な人物となり、そこに使命というものまで帯びてしまった。
本人からは使命感というものは些かも感じられないが、さりとて個人にどんな思いがあろうと、彼が造った飛行機は、国が戦争に使うといったら使われてしまうのである。
ポリシーのある人なら戦闘機づくりは辞めて、反戦争運動に身を投じたりもするのだろうが、これは堀越二郎をベースにしている物語であって、現実にゼロ戦を造ったのだからそこに集約していくしかない。

監督もどう彼を表現するか迷っただろう。
堀辰雄の小説を借りてラブストーリーに仕立てたのは、ゼロ戦にかける男たちのサクセスストーリーになってしまうと、戦争を美化してしまうと思ったからだろうか。

それを受け入れる人もいれば、そうではない人もいるだろう。
だが菜穂子を絡めることで、どんな条件下、状況下でも自分に出来うる限りの精一杯のことをやるしかない、という普遍的なメッセージが盛り込まれたのではないだろうか。未来は誰にもわからいのだから。

無口な二郎の無意識が「カプローニ」の出てくる夢だと私は思う。少年時代はカプローニに先導されるように大志を抱き、なかなか仕事進まないときはカプローニの飛行機も墜落する。
最後にカプローニに誘導されて大草原に出て二郎が「ごめん」と言ったのは罪悪感からだろう。
菜穂子へ割く時間を飛行機作りにぶつけたのに、その夢の結晶は無残に破壊された。
戦争が終わり、ようやっと菜穂子の死に向きあえたと捉えることもできる。

しかし「生ききった」といえる二人の姿には悲劇性は感じられず、不思議な清涼感を与える。
ジブリ史上一番複雑な感情を惹起させる映画だと思った。

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崖の上のポニョ [アニメ]

★満足度65点

崖の上のポニョ [Blu-ray]

崖の上のポニョ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: スタジオジブリ
  • メディア: Blu-ray

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癒されました[わーい(嬉しい顔)]。完全な童話ですね。人魚姫をモチーフにしているとは言ってたけど、泡になる設定も踏襲してました。でもそれはグランマンマーレの『もともと私たちは泡から生まれたのよ。』というセリフに宮崎監督の自然観も現されているのですが。
最近、ジブリの主役は思春期から子供に移り変わってると思う。今までの中で一番子供たちの動きが可愛かった。
主人公の宗介は抱き締めたくなるほど可愛くて、お母さんを探して涙ぐむところなんかはあまりに愛しくて、こちらも涙を誘われた[もうやだ~(悲しい顔)]

ただ、基本メルヘンとは言え、やはり宮崎監督の『自然と人間との共存テーマ』が敷かれていると思う[クリスマス]。まさかカンブリア紀の海に戻っちゃうとは[exclamation]それと共に、登場人物がおおらかになっていくかのような描写も魅力的。

ポニョのことも、ソウスケが子供だから受け入れられたんだなと思うと、感動する。あまりに真っ直ぐな純粋さを目の当たりにして。ジブリ映画に展開する、現代が失った大らかさが羨ましくて[もうやだ~(悲しい顔)]
アンデルセンの人魚姫も王子も子供だったらうまくいったのかもしれないな。

謎なのはフジモトがどうやってグランマンマーレと出会ったか、だな(笑

でも、全部説明なんかする必要ない。魔法は説明できないのだから。それが空想する自由っていう、魔法なのかも。


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アフロ サムライ [アニメ]

★満足度40点

AFRO SAMURAI 劇場版 [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • メディア: Blu-ray


初めて『ライズX』という映画館で観た。
シネマライズでチケットを買い、スペイン坂の方に下ると別に入り口があります。


まずはここの映画館に一言。
下で見るには上過ぎて、上で観るには下過ぎるスクリーンの位置。
2階でみたのだけど前の人の頭がガッツリ邪魔しますねー。
しかもトイレがスクリーン横の暗幕をめくっていくってどうなの
上映中は絶対トイレに入れないよー
内装は好きなんだけどねー。アングラっぽくて。
で、映画の方はというと、けっこう期待しちゃったのもあるがイマイチ[ふらふら]ガンマンや異国人の侍が闊歩している退廃した世界(だけどハイテク)。という設定は良いのだけど、出てくる敵との殺陣がいっつも同じで飽きがくる。

話の展開が読みやすいほど読めるせいか、2時間以内なのにそれ以上に感じた。
ハチマキを制したら、、、実際どうなの?みたいな。
名誉?の割には認められてるのかわからない。
男達が小さな世界で引き摺り下ろしあってるようにしかみえない。
大きいようでスケールが小さく思えました。
ん~~合掌

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