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シード~生命の糧~ 「ウナカメ夜シネマ」に参加 [ドキュメンタリー]

満足度★90点

■いきすぎた資本主義と開発競争の果てに


シード~生命の糧~ [DVD]

シード~生命の糧~ [DVD]

  • 出版社/メーカー: ビデオメーカー
  • 発売日: 2020/10/01
  • メディア: DVD

中野のシェアカフェ「ウナ・カメラ・リーベラ」で、「ウナカメ夜シネマ」という名前の上映会に参加しました。
https://www.cinemo.info/73m
https://www.cinemo.info/member_detail.html?ck=70181

こちらでは毎回、上映内容にちなんだお料理も提供されます(希望制で、今回は2800円でした)。
メキシコの農家から在来トウモロコシを輸入し、トルティーヤなどを販売しているご夫婦なども参加され、とても有意義な時間を過ごしました。

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お料理『マメたね雑穀ごはんプレート』
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〈レビュー〉
遺伝子組み替え作物を食べるとどうなるのかというより、種の多様性の喪失に焦点を当てた作品。

バイオ化学メーカー『モンサント』(今はバイエル)など大手が改変した種は、なんと、豚などの別の生命の遺伝子が使われているという。


南米や第三国の国々の農家は大手のセールスマンに騙されて、在来種の種と引き替えに育ちやすいGMOに手を出すが、それは罠。
メーカーに特許があるため種を採取することはできず、永遠に種を買わざるを得なくなる。そして作物が病気にならないよう、農薬もセットで購入せざるを得ない。企業は各国で政治献金も怠らず、種子の特許が受理されるよう手を回す。この利権の構造たるや。
欧米(主にアメリカ)による、中南米の石油開発による実質的な植民地支配の構造を思い出しました。
石油が種に代わっただけで、構造自体は全くおなじもの。

農薬の飛散により、薬害で苦しむハワイの人々の実状や土壌汚染も描かれていました。

石油採掘により森林伐採の憂き目にあっているマヤ民族などの状況と全く同じ。

マヤ ― 天の心、地の心 ―(字幕版)

マヤ ― 天の心、地の心 ―(字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2015/05/20
  • メディア: Prime Video

この状況に危機を抱き、原種を守ろうとする世界各地の人々の活動に胸を打たれました。

世界各地の種子バンクは『ノアの箱船』そのもの。

しかし戦争や紛争で、この種子バンクを攻撃するということも起きていたという事実に、愕然とした。
民間人の殺傷に関してはわかりやすいため、マスコミも報道しやすい。しかし種子バンクの攻撃はその恐ろしさがダイレクトに伝わりにくいため、あまり日の下にさらされない。
民族そのものの数を漸減させるようなやり方は非道だ。もしかしたら将来、敗戦国が勝利した国に輸入を頼るかもしれないということまで考えられているとしたら、そら恐ろしいことである。


話は戻りますが、種の多様性が重要なのは、そもそもその種の絶滅を防ぐことと、一品種の作付けだと病気による全滅リスクが高まること、鳥の糞などで在来種を脅かし広い範囲で生態系にも影響するから。


アイルランドのジャガイモ飢饉は、100万人もの餓死者を出し民族離散をもたらしましたが、ほぼ一品種のジャガイモしか育てておらず、それが病気になり不作になったことが原因。日本でもかつて大根は800種類ありましたが、今や都市部で流通してるのはほぼ青首大根だけではないでしょうか。


制約により自由な販売や製造ができなくなったのは野菜だけではなく、生命にかかわるものとしては塩もですね。
日本では1971年に「塩業近代化臨時措置法」が成立し、塩田が撤廃。海外の塩をわざわざ輸入して日本で天日干しして国内製造として販売している時期がありました。現在もコストの面で、伯方の塩は中身はメキシコ産だったりする。このように複雑に利権が絡み合った不思議な世界に、私たちは生きているのだなと寒気を覚えます。


いきすぎた資本主義は生物のあり方も変えてしまう。
遺伝子組み換え作物が登場してから年月は浅い。

果たして遺伝子組み替え作物を食べ続けた人類の数百年後はどのようになっているのか。
現在は壮大な人体実験のさなかにいるのだろうと思う。

タグ:映画 シード
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ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇 [ドキュメンタリー]

満足度★75点

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■舞台を観た者にとってはあっという間の96分

ミュージカルを観に行った友人と映画も一緒に。個人的には熊の“中の人”がツボ。ダンス習っているので、振り付けシーンがもっと見たいと欲が出ました。

フランス人の絶え間なく溢れ出す言葉と会話の量に圧倒されつつ、ゲイであることで子供の頃に受けた差別や孤独感が彼の今を形作ったのだとわかる構成になっていました。
居丈高で近寄りがたいイメージのファッションデザイナーとは違い、彼は凄く優しい。
演出が自分のイメージと違うと告げた振り付け師に後でフォローしたり、本番直前に怪我したダンサーにも自分のことのように心痛める。本番直前間際に進行が青くれていても、決して怒鳴ったり物に当たり散らしたりしない。
そのアバンギャルドなデザインからは想像できない人物像。

アジア人の視点でみると、欧米人には珍しく、人に嫌われたくない、好かれたいといういじらしさが、隠されることなくそのまま伝わってきました。
でも!自分がデザインした服には一切の妥協をしない。
僕はいつか突然流行遅れになる、という言葉が、世間のトレンドのめまぐるしさを物語ります。
夢を売る商売は、とても刺激的で美しい。

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マルタ騎士団 知られざる領土なき独立国 [■BOOK・COMIC]

満足度★70点


マルタ騎士団 知られざる領土なき独立国

マルタ騎士団 知られざる領土なき独立国

  • 作者: 武田秀太郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2023/08/31
  • メディア: Kindle版

十字軍遠征のときに生まれた、宗教によらず聖地を目指す巡礼者や病人やけが人の保護を主とする組織。今でも現存する領土無き国家。3.11のときも日本を支援してくれたという。既存の政府や国家に影響されないスピード感で支援活動できるところが、魅力と感じた。
日本人騎士も二年前に誕生、最近テレビにも出演し話題となりました。これはその武田さんが書いた本。

現存するマルタ国のマルタ島をナポレオンに追い出されるまでは一時領土としていたが、今は其の国とは関係ない(関係なくもないけど)。十字軍という歴史の側面を面白く学べるが、手放しで称賛する組織とも言い難いことがわかった。

マルタ騎士団になるには、在来騎士による完全スカウトのみ。条件はキリスト教徒で人道支援に従事しているかうんぬん。代々貴族のみの出自構成だったが、貴族の条件は撤廃。
結局政治的組織であり、現在も超金持ちの白人貴族がほぼ占めていることを考えると、きれいごとではない選民思想も垣間見える。しかし稀に宗教の教えはとんでもない善人を生み出すこともある。混ざり気のない信念を与えるのも、宗教の力の一つ。
「持てる者たち」の喜捨精神がどこまで現代で影響をもつのか、期待したい。



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リドリー・スコットの描く「ナポレオン」 [戦争ドラマ・戦争アクション]

満足度★65点

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■軍師としてのナポレオンの魅力は皆無。鋭利さも狡猾さも描き切れていない
王制打倒した後、船頭が多数現れ消えていった混乱のフランスを、ほの暗く灰色の色調で彩る。
戦闘シーンは圧巻、イギリスやロシア入り乱れるワーテルローは関ヶ原もこうであったのかなと思わせる迫力があったが、肝心のナポレオンの描き方はというと、英雄のカリスマ性も戦略家としての知性も描かれず、物足りなかった。

この映画のナポレオンは野獣のように猛々しいわけではなが、名声や地位には飢えている。しかしどこか感情が乾いているように見えた。他人事のような目で、自分自身を観ているようだった。自分自身の強烈な野心から動くというより、むしろ世間に流されるままに、求められるままに英雄を演じたといってもいい。田舎者であるが故の劣等感から、成り上がりたいという欲望はあるが、フランスのために戦うという大儀は感じられない。

映画は終始ジョセフィーヌとの奇妙な愛憎関係を描いて終わった。
とはいえ、底冷えする瞳をしたホアキン・フェニックスは、かつて映画「グラディエーター」で演じた皇帝ネロの時のようにつかみ所のない恐ろしさも醸し出していたので、真っ当にナポレオンを描く映画に出たらもっと英雄然としていたかもしれない。うーん、リドリースコット監督は、ナポレオンを信念と大儀なき英雄としてとらえたのだろうか。前作の「最後の決闘裁判」のように登場人物の心理描写と駆け引きを主軸にするのであれば、これほど大がかりなロケは不必要だったのではないかとさえ思える。

それにしてもローマ時代ガリアと蔑まれていたフランス。そのローマの主権を握ったゲルマン人。イングランドに入植したゲルマン系アングロサクソン。そのイングランドが再びフランスにとどめを刺すのが因果だなぁと思う。

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2023年鑑賞した映画(44本)&ベスト5 [▼各年鑑賞映画リスト&ベスト5]

あけましておめでとうございます。
新年最初の投稿は恒例の、昨年の鑑賞リスト。
2023年は、44本と極めて鑑賞数の少ない年となりました。
しかし毎月劇場に足を運んだ年でもあり、スター主演の大作の続編をきっちり追えたという満足感はあります。
また話題作の公開が相次ぎ、前半は「RRR」の話題が席巻、夏はトム・クルーズのスタントが話題になった「MI」シリーズが賑わし、後半は宮崎駿の新作が席捲した感があります。
個人的には人間の業とどうしようもない感情を描いたヒューマンドラマ3作と、意外な展開を見せたムネアツの「ミスター・ガラス」、大作の名に恥じない楽しさとAIの脅威を描いた「ミッション・インポッシブル」を選択。
〈ベスト5〉
●ザ・ホエール
●帰れない山
●ミッション インポッシブル/デッドレコニング
●ミスター・ガラス
●スティル・ウォーター

〈鑑賞リスト〉(★劇場鑑賞)
★人生クライマー/山野井靖と垂直の世界(2022日)※ドキュメンタリー
ベイビー・ドライバー(2017米)
スパイダーマン:スパイダーバース(2018米)
キャプテン・マーベル(2019米)
★アントマン&ワスプ クアントマニア(2023米)
ブラック・ウィドウ(2021米)
ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2021米)
ワカンダ・フォーエバー(2022米)
マイティ・ソー/ラブ&サンダー(2022米)
パディントン2(2017英仏)
★帰れない山(2022イタリア・フランス・ベルギー)
イエスタディ(2019英)
英雄の証明(2023イラン)
★マヤ 天の心、地の心(2011独)※ドキュメンタリー
★ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇(2018仏)※ドキュメンタリー
スティル・ウォーター(2021米)
ザ・ロストシティ(2022米)
L.A.コールドケース(2018米英)
★開拓者たち(2023チリ)
ライオンキング(2019米)※フルCG版
エベレストに消えたマイケルを探して(2023英)※ドキュメンタリー
47RONIN(2013米)
フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021米)
SHOHEI OHTANI Beyond the dream(2023米)※ドキュメンタリー
★ドミノ(2023米)
★ガザ 素顔の日常(2019アイルランド・カナダ)
ジャンクヘッド(2017日)※ストップモーションアニメ


ザ・ホエール [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: Happinet
  • 発売日: 2023/10/04
  • メディア: Blu-ray
帰れない山 [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: Happinet
  • 発売日: 2023/11/08
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スティルウォーター [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2023/01/13
  • メディア: Blu-ray
ミスター・ガラス [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2019/09/04
  • メディア: Blu-ray

▼ちなみに米エンターテインメント・ウィークリーの発表した2023年の映画ベスト10はこちら。
1位「オッペンハイマー」
2位「パスト ライブス 再会」
3位「キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン」
4位「ソルトバーン」
5位「神さま聞いてる? これが私の生きる道?!」
6位「メイ・ディセンバー」
7位「哀れなるものたち」
8位「ザ・ホールドオーバーズ」
9位「君たちはどう生きるか」
10位「バービー」

▼ロッテントマトのジブリ評価はこちら
https://eiga.com/news/20231229/14/

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2023年に読んだ本(23冊)&ベスト5 [■BOOK・COMIC]

2023年はなんと年号と同じ23冊!少ないですね。
このなかで社会的に読んでよかったと思う本は「ジェフリー・エプスタイン 悪魔の顔~」、「マルタ騎士団」。世界で起きていること、また世界は広いことを思い知った本だった。
ただマルタ~は騎士団称賛のきらいがあるのでベスト5にはいれなかった。

フィクションとして面白かったのは「ザリガニの鳴くところ」。人間が動物の様に、生命の危機にあった時に邪魔者を排除するということを、誰が一体さばけるのか、そもそも裁くべきものなのか、生きることの根源を問うた本。逆にノンフィクションでクライマー山野井泰史に肉迫した「凍」。やはりこれも生きることの根源、本能、そして生きる喜びとは何かを考えさせれた。登山は危険なことをすることが楽しい行為ではない。自分の極限を超えてただその頂きに魅せられたその姿には、人間の好奇心と冒険心があらゆるジャンルにおいて道を切り開く原動力なのだと思い知らされる。
逆に残念だったのは、ミレニアムシリーズ。好きなシリーズだっただけに、やはり1作目作者の死は痛いと感じた。


〈読んだ本リスト〉(★はベスト5)
・アラスカ永遠なる生命(星野道夫、2003.6.1、小学館)
・神が愛した天才科学者たち(山下直久、平成25年3月25日初版、角川ソフィア文庫)
・ミレニアム5/復讐の炎を吐く女(上下)
★バッタを倒しにアフリカへ(前野ウルド浩太朗、2017.5.20初版、光文社)
・ミレニアム6死すべき女(上下)(2019.12.10、ダヴィド・ラーゲル・クランツ、早川書房)
・what’s up?(平出和也、2023.03.10、山と渓谷社)
・ザ・フォックス(2022.5.24、角川文庫、フレデリック・フォーサイス)
・ヒルは木から落ちてこない。僕らのヤマビル研究記(2021.8.13、樋口大良、子どもヤマビル研究会、山と渓谷社)
★うんち大全(ジャン・フェクサス著、1998.10.25、作品社、高遠弘美訳)
・ジ・エンド・オブ・ジ・ワールド(那須正幹、ポプラ文庫、2015.2.5)
・北海道人-松浦武四郎(佐江衆一、新人物往来社、1999.10.15)
・神の方程式「万物の理論」を求めて(ミチオカク、NHK出版、2022.4.30)
・ちくまQブックス ふしぎなことばことばのふしぎ(2022.08.10)
★ジェフリー・エプスタイン億万長者の顔をした怪物(2022/3/11、ジュリー・K・ブラウン、ハーパーコリンズジャパン)
・地球の歩き方ムー-異世界の歩き方ー
・君たちはどう生きるか
・十角館の殺人(新装改訂版、綾辻行人、2020.7:8/1991.9.15旧1刷)
・深夜特急1 香港・マカオ(平成6年3.25)
★ザリガニの鳴くところ(2021米)
★凍(沢木耕太郎、平成二十年、十二月一日)
・マルタ騎士団(武田秀太郎、2023.6.10、中央公論新社)
・ウソみたいだけど実在する!世界のスゴい国(2020/11/1、JTBパブリッシング)
・イラク戦争従軍記(朝日新聞記者)

ジェフリー・エプスタイン 億万長者の顔をした怪物

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  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ジャパン
  • 発売日: 2022/03/11
  • メディア: Kindle版
バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

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  • 作者: 前野 ウルド 浩太郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/05/26
  • メディア: Kindle版
うんち大全

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  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 1998/11/01
  • メディア: 単行本
ザリガニの鳴くところ

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  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2020/03/05
  • メディア: Kindle版
凍 (新潮文庫)

凍 (新潮文庫)

  • 作者: 耕太郎, 沢木
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/10/28
  • メディア: 文庫

タグ:読書
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