ヘレディタリー 継承 [ホラー・モンスター]
■終盤で拍子抜け
何かあからさまな超常現象が起きそうで起きない、ひたひたと恐怖が迫る描写が続く。
…が、なかなか霊的な類の力が顕れないため、家族の中で異常性を垣間見せる女系の精神疾患の気質が、遺伝として「継承」されてしまうことを指しているのかとさえ疑いった。
血脈の異常性が周囲を狂わしていくストーリーならば、私としてはそちらのほうが怖かったのだが、結局悪魔に落ち着いちゃうんだな。
もちろん序盤から自殺したリーの兄の話や祖母のカルト性など悪魔を示唆するエピソードはプンプンしていたのですが、「悪魔を信じる人間の精神」が植え付けられていく人間の怖さ、というオチも想像したわけです。
しかしガチで悪魔とわかっていく過程で、なぜかどんどん怖くなくなっていきました。
精神疾患か悪魔つきなのかわからない【エミリー・ローズ】のほうが個人的には精神的にきつかった。代々、高位の悪魔「ペイモン」が継承された割には信者も少ないし、あまり大したことは成し遂げていなそう。妹の首がちょんぎれてしまう事故が一番グロくて恐ろしかった。
まあそれら全てが悪魔のなせる業なのであれば…とは思うが、むしろこれからペイモンとカルト信者たちが何を成し遂げていきたいのかが、気になる。
MEN―同じ顔の男たち― [ホラー・モンスター]
■聖書をベースに、種の本質を描いたホラー
終映後はえ?これで終わり?と思って呆然としたまま劇場を去ったが、電車の中で正気に戻ってみると、案外これはステレオタイプな男女という種を描いたものかもしれないと思った。
映画「マザー!」の後もしばし放心したが、本質的には両者とも似ているのでは。
要するに聖書をベースに、アダムとイブを描いたものであると、私は理解した。
極端にいうと、男は女に無償の愛を求めるが、女は男に安心安全を求める。女性がずっと私の側にいてね、というのは生活の安定や安心を得たいからで、男性が俺だけを愛してくれ、っていうのは、外でやんちゃしても多少怒りっぽくて暴力ふるっても、何もいわず許してねっていう母なる愛的なものに偏る(古典的には)。
少年サミュエルが求めたように、自分の気が向いたときに嫌な顔せず相手してくれて、神父が求めたような肉欲にも応えてくれる存在。なにをしてもしょうがないわね、と許してくれる存在。
それはイブというよりも聖母マリアに近い。
男はマリアを求めているのに、イブはマリアになれない。ハーパーはどちらかという好奇心旺盛で禁忌を破り、楽園を出ていくイブの象徴のようだ(もしはリリアン)。
(ちなみにサミュエルはヘブライ語で「彼の名は神」という意味だが、関係あるのだろうか)。
突然田舎に現れた女性にあれこれとちょっかいを出す男たち。冴えない田舎の中年男。高圧的な変態神父とただの変態。鈍感な警官。ハーパーの目に映る村の全ての男性は同じ顔だけど、それは女性に敬意を払わない象徴というだけで、そこに謎解き要素はない(副題にあまり気を取られてはいけない)。
最後、ものすごく生々しいものを見させられたが、これからも½の確率でエンドレスに産まれる男たちという暗喩ではなかろうか、と。
そしてたくさんの失礼なかまってちゃんたちに、これからも共存しなければならないイブたちは、大変だね!っていうメッセージを、ホラー仕立てにして、聖書のスパイスを振りかけて、もしかしたらケルト神話まで挿入しちゃった、ひねくれた女性賛美の映画なのかもしれないとさえ、思う。
ハーパーが切り裂いたサミュエルの右手は、鉄格子に裂かれていたジェームズと共通する気もするので、男たちの所行はジェームスの怨念が憑依したものとも受けとれるが…。
冒頭の美しい森や自然が、閉鎖的で恐ろしい場所に代わっていくのも、ハーパーの結婚に似ているのかも。最初は居心地がいいが逃げ出したくなる。
監督に対しては、無垢な凶暴さで戦慄させてくれた「エクス・マキナ」のように楽しませてくれたかというと、期待外れだったといわざるを得ない。ホラーにはホラーなりの見た後のすっきりさはないし、サスペンスならサスペンスなりのすっきりさもない。グロい寓話をみましたね、というただそれだけ。
オールド [ホラー・モンスター]
■意表を突く展開
珍しくシャラマンのオリジナル脚本ではなく原作があるとのことだが、シャラマン監督の作風に見事にはまった。
アイデアの面白さだけで突っ走り、ただの不条理な世界として終わってしまわないかとヒヤヒヤもしたが、ネタ明かしに驚き&納得&すっきり。village程ではないが、意表を突く展開だった。
過去作品を振り返れば、シャラマンの映画はきちんとオチがあるから好き。
以下ネタバレあり。
マギー(MAGGIE) [ホラー・モンスター]
■話の起伏がなく退屈だった
公開時から「泣けるゾンビ映画」「ソンビ化する娘を守るシュワちゃん」という煽りで、割とシリアスなイメージは持っていたのですが、まさかここまで何も起こらないとは。
私は勝手に、ゾンビウイルスに冒された娘を連れて抗体求めに奔走するシュワちゃんを想像したわけです。
妻の制止も振り切り、娘を助手席に乗せ、まことしやかな噂だけを頼りにとりあえず走り出す。
そりゃあ、途中たくさんのゾンビに襲われますよ。時にはその中にいた知人も殺します。
どんどん凶暴化する娘を助手席に縛り付け、車の中も外もゾンビっていうピンチをどうにかくぐり抜け、ボロボロになりながら車を走らせるわけです。
なんだったら世界保健機構を敵に回してもいい、俺の娘だけは絶対助ける!
……とまあ、そういう映画を期待してたわけです。
アビゲイル・ブレスリンもシュワちゃんもいい演技してます。
感染者の視点と心の動きを丹念に描いた、珍しい映画だとは思います。
ただ、もう一捻り欲しかった~!
極限に苦しむけど最後まで人間性を保てる薬を渡されたシュワちゃんが、いちるの望みを抱いて娘に投与するのかと思ったら、それもなし。
マギーが人間性を辛うじて保っている状態で、父親にチュッってして終わり。
最後まで闘っていたのはマギーでした。 そりゃタイトルもマギーだけどね。
うーん残念。
ワールド・ウォー・Z [ホラー・モンスター]
■「今までに無い」は超えられなかったゾンビ映画
原作の、ウイルス潜伏期間を無くしたこと。多数の人間からの視点を省いた事。
このオリジナリティーを廃してしまって、同タイトルを冠する事が果たして正解なのか。
国連の人間という視点から、世界中に同時にパンデミックが起こったらどうなるのか?
政治は機能するのか?助ける人間を選りすぐるのか?
政府側の視点で描かれるのは面白いとは思う。
「0号感染者」を探すべく情報収集したり、WHOにワクチンを入手しに行ったりと、ゾンビ化人間から逃げ惑うだけでなく、ウイルスを食い止めることを科学的現実的に行動している。
いち早くパンデミックを予見して防御壁を建造したエルサレムが、パレスチナからの流入民を受け入れたが、コーランの大合唱のせいでゾンビを興奮させてしまい壁が壊れてしまうのは皮肉だったし、格言めいた台詞でなるほどと唸らせた「希望の星」であった学者が、不慮の事故で死んでしまうのも現実にありそうだ。
しかしあくまでも「ゾンビ」ではなく「ウイルス」として対応していることは認めるが、後半はゾンビに「見つからないゲーム」のようになってしまい、今できる唯一の対処法を発見するくだりが、ややご都合主義に映る。
今までゾンビ化人間に全く無視される人間がいたことから、「ある特定の病気に罹患している人は襲われない」ことを突き止める。
その「病原体」を探し出す為に主人公自ら被検体になるのだが、たった一回で「ビンゴ!」になってしまうのだ。
音に敏感なゾンビに見つからないよう行動するくだりが長すぎて、その肝心の決死の行動が活きてこない。
まだそれなら【アイ・アム・レジェンド】のほうが、ワクチンをずっと探していた設定なので、同じウイルス系ゾンビ物として現実的ではなかろうか(他の部分では突っ込みどころも多いけど)。
続編を作るならば、是非ともゾンビを解明してほしい。
襲いたくない患者を瞬時に判断できるのは何故かとか、ゾンビが襲われない人間が、目の前でゾンビを殺して行っても襲われないのかなどなど。
ゾンビは人肉を好むが、ウイルスは宿主を求めている。
襲う人間=宿主がいなくなったら、体内のウイルスはどうするのだろう。
ウイルス罹患者は通常の食物や水を飲まず喰わずで生きていけるのか。
他の作品と一線を画すなら、是非とも科学的見地からの行動を求む。
バイオハザードV [ホラー・モンスター]
■たちの悪い同窓会
5作目にして、とうとう落ちるところまで落ちた感のある作品。
のっけから安っぽいCGで1~4までをおさらい。
4のラストでは敵に操られているクリスがアリスに総攻撃をかけるところで終了したが、アリスは結局捕らえられ、アンブレラ社の施設で拷問をうけるシーンから今回は始まる。
そこはアンブレラ社の事故の起こる前に造られた生物兵器の実験場。今実効支配しているのは「レッドクイーン」(1・2などで登場した人工知能)だ。そこで助けに来た謎の女性エイダと、今まで敵だったウェスカーが助けに来て、スーパーまりおよろしく1ステージごとにアンデッドを倒し突破していくのだ。
全人類がほぼ壊滅状態なのに、電気は?エネルギーは?食物は?ともう冗談のような世界観になってしまった。ウェスカーは「アンブレラ社と決別した」と言っていたが、アンブレラ社だって機能してまい。まあレッドクイーンは人類を絶滅させるという意志をお持ちのようだから、戦うしかないわけだけど。
4でテコ入れのために投入したプリズン・ブレイクのウェントワース・ミラーの代わりといっちゃぁなんだけど、1で一緒に戦ったミシェル・ロドリゲスをクローン実験体として登場させ、また、同じく2のカルロスも登場して、ペラペラの脚本を「なんとなく」誤魔化した感じ。
懐かしさで観客が惑うと思うか。
あんなに戦ったウェスカーも、最後はアリス頼みという情けなさ。
で、結局「アリス計画」って何だっけ?
プレデターズ [ホラー・モンスター]
★満足度57点
プレデターズ ブルーレイ&DVDセット (初回生産限定) コミック付き
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- メディア: DVD
ハプニング [ホラー・モンスター]
★満足度70点
植物が人間に害のある毒物を吐くというのは荒唐無稽ではないかもね。
悪臭を放つ有名な臭い花も実際に存在するし、蘭は二酸化炭素を吐くので密室で栽培してると一酸化炭素中毒の危険があるのはよく知られてることだし。
ただ、シャラマンは冒頭から植物かも、とヒントを投げつつも、含みを残して引っ張っている。
漠然と何が起きてるか分からない恐怖、この感覚がハプニング
同じ空間の中の風や植物をこんなに意識させられたのは初めてかも。
いつも風や木々のざわめきは、恐怖の対象を引き立てる効果音として使用されてきた。
都会には自然がないとはいうが、実はよくみると沢山あることに気がつく。彼らには私たち人間の毒(排気ガスなど)を浴びせてきた。その逆転現象が起きただけだが、身の置き場がない、とはまさにこのこと。
攻撃対象が変化するのも興味深い。蟻のように増えすぎた人間を減らしたあとは、怒りを誘発させて暴力的な人間を淘汰したようにもみえた。子供たちが助けを請う家での出来事は、互いの怒りをきっかけに、何かしらの成分が憎しみを増長させたのだろう。
考えてみたら、主人公はどんなシュチュエーションでも怒らない人だったしね
ほかのどのシャラマン映画より現実的でもあり、人間くさい映画だったと思う。特に主人公が妻に会いたくて外に出て行くシーンは不覚にもぐっときた。
いたわりや優しさを大事に・・・という普遍的なメッセージも見え隠れしつつ、超常的ホラーとしても十分怖い。観る人の自由な解釈に任せていると思う。
俳優メモ>>ズーイー・デシャネル
どことなく不思議ちゃんな妻を演じてたズーイー・デシャネルは、今はユニット「She&Him」での音楽活動の方が名が知られているかも。若い子の間ではファッション・リーダーとして知られている。
クリクリした目の個性的な顔はチャーミングでどことなく儚げ。最近のでか目整形顔に飽きてきたから、とても魅力的だと思う。
ナンバー23 [ホラー・モンスター]
★満足度45点
ナンバー23 アンレイテッド・コレクターズ・エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
- メディア: DVD
後半はジョエル・シューマッカーお得意の、怒濤の謎解きサスペンスが展開するが、いかんせん前半が長過ぎた。
ナンバー23という数字の因縁づけに終始していて、「だから何?」という心境に陥ることも。
男の病的な執着心に特に理由はなく、むしろ理由も無く何かにとり憑かれる人間の心理はうまく描写していたと思う。
観ているこちらも息苦しさを感じるほどの、ジム・キャリーの虜ぶり。
人間は、食べ物が好きという事と同じくらい、自然に特別な理由もなく何かに捕らわれることはあると思う。そういう傾向に陥りやすいのは男性のほうじゃないかなー。とふと思った。脳の違いだろうか?
その点奥さんの行動は現実的だ。
彼女の行動が推理を180度回転させるが、途中まではほんっとに騙された。謎が解かれてみると、理に叶ってるんだけどね。
最後のメッセージは、「たかが数字だから夢中になってもいいだろう?」と逆のメッセージにもとれて、怖い。
俳優メモ>>ヴァージニア・マドセン
奥さん役のヴァージニア・マドセンは昔っから「売れそうで売れない」とか、映画雑誌に書かれていた。そんな彼女【サイドウェイ】で一躍浮上してから役がついたものの、ハリソン・フォードの【ファイヤーウォール】で作品選び失敗。この映画では彼女の落ち着いて清清しい感じがあったからこそ、暗くてクサクサしなくて済んだと思う。
リーピング [ホラー・モンスター]
★満足度70点
ヒラリー・スワンクがなぜこんな映画に?という批評家がいたけど、そうかなぁ?と思った。
彼女がいるから最後のとんでもない展開も説得できたんじゃないと。
絶対B級にさせない存在。地味っツーかどうやっても浮ついた演技にならないというか。きっと彼女が【オーシャンズ11】とかにでたら、サスペンスっぽくさせちゃうんじゃないかな。
いやしかし少女版オーメンかと思ったら実は・・・すっかり騙されました
牛を殺された農家の人は嘘ついてなかったんですね。
サタン崇拝者は自分たちが少女を殺せないから、元聖職者で奇跡研究家の彼女に目をつけた、と。
ベッドシーンはサービス・ショットじゃなかった、と(笑)。
しかし一つだけ疑問が。10の予言はそもそも人間に対して起きるものなのか?
そしたら今回は特別な人間たちだけに天罰がくだったことになるが。。。
まあいいか、神の意思だものね。
彼女を見れただけでも価値アリ、と思う。普通に謎とき面白いしね。
それにしても金髪のヒラリー・スワンクはあか抜けて見えたなぁ。