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カストラート [歴史絵巻・文芸作品]

★満足度65点


■弟依存症の兄との増愛の物語

伝説のカストラート、カルロ・ブロスキの人生を追った伝記映画。
というより、兄弟の愛憎の物語といったほうが正しいかもしれない。

美声の持ち主の弟と、才能が無い作曲家の兄。
兄は自分に才能が無いのを無意識に自覚しつつ、いずれ大成すると豪語して、弟の今ある姿は自分のおかげだと言い聞かせる。
いるなぁこういう奴、と辟易。
捨てられるのが怖いだけなのに、恩着せがましくて、腰巾着は自分の方なのに、弟との才能の開きを見せつけられると癇癪を起こす。挙げ句の果てには弟に対してストーカーまがいの行為まで。
弟の睾丸をとったのは自分なのに、罪滅ぼしで種を補い弟に子孫を残すと、自分はようやっと作曲家の道を諦め死地(戦場)へと向かう。

とまあ、勝手極まりない兄だが、このように今作品では悲劇の比重は兄に置かれる。
凡人が才人に振り回された人生を描いたともいえなくもない。

カストラートの弟は、意外にもまっとうに野心的で、明るく開放的だ。
男としての人生を幼い頃勝手に奪われたカルロは、その張本人が兄とも知らず生きてきた。
性器がなくても世界を魅了できるとばかりに甘美な歌で女性の心を虜にし、子孫繁栄能力が無くても女性をベッドで喜ばす。有能な作曲家の楽譜を盗み、自分の声を兄以外の土俵で試してみたいと願う。
貴族の館やオペラハウスでの豪華絢爛な衣装や舞台美術、食器類などがけばけばしくも美しい。

実際のカストラートの録音は、20世紀初頭のアレッサンドロ・モレスキという人で、実質最後のカストラートだと言われているそうだ。
カルロ・ブロスキの活躍したのは1700年代なので、どこまでが真実かはわからないが、声のために人生を翻弄された陰の歴史として非常に面白かった。

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