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かぐや姫の物語 [アニメ]

★満足度85点

HP…http://kaguyahime-monogatari.jp/

■ストーリーを凌駕した素晴らしい絵

様々な評でハイジとの比較もよくされるが、ハイジとの違いは、かぐや姫が何かしらの背徳感をもってこの世に生まれてきたというところだろう。
映画では、その背徳感の根源である「犯した罪」の部分が、話の展開上あまりにあっさりしているので、「え?そ れだけなのか」とストンと腑に落ちない部分もある。
パンフレットを読むと、ネタバレどころではない丁寧な解説が記載されているので、気になる人は買ったほうがいい。
その理由を知らなければ、かぐやの振る舞いは多少意固地に映るはずだから。

地上への憧憬ゆえに、他人の封印した記憶を揺さぶってしまったことが罪。
ゆえに、地上の穢れを体験させることがかぐやへの罰。
だが、かぐやは罰だとは思っていない。
しかし彼女の幸せは、周囲の「欲」によって変化してい く。
この欲こそが、天上でいう穢れなのだろう。

「生き直す」ために生まれ落ちたにも関わらず、天上と同じような世界に押し込められそうになった「拒絶」の心の叫び。
今までのジブリ作品のヒロインと違うのは、プラスではなく拒絶の意志が貫かれているところだろう。
彼女が古里に疾走する、あのほとばしるエネルギーは、怖い。
行き場のない気持ちの力は、彼女の世界を歪めてしまった。

たとえ、かぐやの「なぜ」が明かされても、この映画の魅力は全く損なわれはしない。
かぐやが婆の腕の中で何かを発見するたび、余白が埋まっていく。
一枚一枚丁寧な水彩画はこれこそアニメ(だけどアニメと 呼ぶにはしのびない美しさ)。
かぐやが喜びとともに成長していくように、観客も自然の中を生き直す。
かぐやはどうあっても「帰りたい、死にたい」とは思って はいけなかった。
思わなければ、何か打開策はあったかもしれない。
天上に帰るかぐやはまるで死人のようだった(天界人が仏陀に酷似していることもあって)。
平穏ということが、ただ心をなくすという無味乾燥な場所だとしたら、天界も冥界も変わらない。
自然賛歌とともに、ジブリ作品に共通の「生きろ」という メッセージが盛り込まれているのだと思った。

ただ、かぐやが余りにも自分のことばかりで、周囲への配慮が足りないのは気になりました。ヒロインに感情移入する映画ではなく、彼女の目を通して人と自然の関係をしみじみと感じる映画と言えるでしょう。

余談ですが、地井さんのアテレコがあまりに上手で感情豊 かなので、本人が他界したこともあり、聞いていて泣けました。


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