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ノア 約束の船 [歴史絵巻・文芸作品]

★満足度70点 

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ノア 約束の舟 [Blu-ray]

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■箱舟という密室サスペンス

ノノアの幻視や、アダムとイブの子孫の持つ、神の遺伝子ともいうべき超然とした体力や神通力などが、抽象的でことさら大げさに描かれないところがいい。あくまで人間として描いているが、人間を少し離れたところにいるような。

一番気になっていた、箱舟伝説で一番有名な動物達を集める場面をどう表現するのかと期待していたら、勝手に番(つがい)としてやってきた(笑)。舟を作る材料として森林が生えていくなど、その辺は変に新解釈をこじつけず、神の「みわざ」として直接的に描いている。

大洪水が起こるまではありきたりなノアの物語だったが、そこから【ブラック・スワン】で魅せたダーレン監督の手腕が発揮される。聖書の荒唐無稽な世界から一転、密室サスペンスに。

まさか、神の意志を遂行しようとするノアと、産まれてくる子どもを守る家族との精神的な闘いになるとは思いもよらなかった。
神はあくまで「人間の滅亡」を望んでいて、次男・三男は妻を娶らずに寿命が尽きたら死ぬのだと説き伏せていたノア。そこへ長男の妻が妊娠し、激高する。
なぜなら神の意思を貫く為には、自分が殺さなくてはならないから。崇高な命令を全うすることのみを目的とした彼は、どんどん狂気じみていく。

家族が馬鹿みたいに手放しで妊娠を喜ぶ様をみて、ノアは心底自分たち人間が愚かだと痛感する。
箱舟が完成し、人を見殺しにした罪悪感に耐えに耐えていたこともあるが、ノアは自分も含め、いつカインのようになってもおかしくないと悟る。ここにキリスト教の絶対的な性悪説が感じ取れる。

「善良な人間だから神に選ばれたのでは?」と問う家族に「任務を遂行できると思ったから選ばれた」と答えるノア。
本来の聖書ではノアと息子たち3組の夫婦が箱舟に乗り込んだことになっている。そこを変更し、息子の妻となる娘は幼い頃ノア一家が拾った孤児、恋人のいる長男をうらやむ思春期の次男、まだ子どもの三男という設定にしたことが、このサスペンスを生む。
妻を娶りたい次男ハムは「子孫を増やさない」と固く心に誓うノアとことごとく対立する。
そこへ「生きる権利を勝ち取るのは人間だ」とこっそり乗り込んでいたカインの末裔に唆される。
最後にノアの元を離れるハムは、ある意味純粋ではあるものの、自然界を駆逐し貪るように増えていくこれからの未来の人間を示唆するものがあった。
聖書をそのまま表現するよりも、ずっと人間くさい葛藤を描いたこの脚本はうまい。

ただ、ノア一家の周囲や祖父の住む山までの道のりが徹底して荒野だっただけに、他の人間の営みがちっとも垣間見えなかったことや、それにより洪水で浄化させる人間達が生活感の乏しい記号化された存在としか捉えることができず、ノアが置き去りにした人間たちへの苦悩が全く感じられなかったこと、カインの末裔が高度な精錬技術を有したとは思えないことなどが、残念。

失楽園の原因となった蛇の抜け殻が、聖書に伝わる「ノアの一子相伝の秘術」という点や、ノアの箱船を手伝う堕天使(ウオッチャーとしたのは些か不満も残る)が、死ぬことが解放=神の元へと還るという構図は良いと思った。

>>メモ
ラッセル・クロウが一人で佇んでいるとオーストラリア開拓史の物語にやや見えてしまうところを(笑)、ジェニファー・コネリーの品格と神秘的な風貌が補っている。
双子を妊娠するイラ役のエマ・ワトソンの演技もすごい。女優陣の演技がなければ、ラッセルの存在感だけが際立ってしまっただろう。


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