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ダン・ブラウン【インフェルノ】とダンテ【神曲】 [■BOOK・COMIC]

★満足度40点

最近、フィレンツェづいている。
常々ダンテを読もうと思っていたところ、タイムリーに【インフェルノ】が登場。
さらに追いかけるように、上野でウフィツィ美術館展も見てきた。 

神曲 煉獄篇 (角川ソフィア文庫)

神曲 煉獄篇 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: ダンテ
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2013/11/22
  • メディア: 文庫

神曲 天国篇 (角川ソフィア文庫)

神曲 天国篇 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: ダンテ
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2013/11/22
  • メディア: 文庫

ダンテの【神曲】。
この、西洋美術史や絵画に何にでも登場する神曲とやらに凄く興味は持っていて、満を持して読み始めたが…。
うーん、結局、私の心には何も届かなかった。
キリスト教徒ではないのだから、当たり前と言えば当たり前だけれど、もう少し起伏のある物語性があって、神学を説きつつ普遍的な感動をもたらしくれる物だと思っていたが、全くの見当違い。

煉獄では、ダンテがローマの哲学者ウェルギリウスに導かれ、歴史上の著名人たちに出会い懺悔や讒言を聞き、その罪に応じた責め苦に苦しむ亡者たちの7つの坂を登るのだが、ただ会話と事実の羅列のみで、仰々しい形容詞ばかりが並ぶ。 (ちなみに図書館で借りれず、地獄編だけ未読)

天国編でもハッと思わせる叙述はなく、ひたすらベアトリーチェを讃えるさまは、なにやら盲目的を超えて滑稽にも思えた。 神よりも常にベアトリーチェを讃えてるのだから。

だけどまあ、魂が原罪の罪に染まるタイミングという解釈は、西洋人の物の考え方を知る一助にはなった。
洗礼を受けていないまま死ぬと、原罪から解放されない。だから、生まれてすぐに洗礼を行うんですね。
しかしそれだと、キリスト教に帰依するという意識がないのに、勝手にキリスト教信者になっちゃうっていうね…。

文中、ダンテ自身が持っていたであろう疑問を、天国で偉人に見透かされるという形で叙述しています。
「おまえはこう考えた。『ある人がインダス河畔で生まれたとする。その地にはキリストについて語る人も、読んで教える人も、書いて記す人もいない。
その人の考えること、なすことはすべて人間理性のおよぶかぎりでは優れている。
その生涯を通じ、言説にも言動にも罪を犯したことがない。
その人が洗礼を受けず、信仰もなくて死んだとする。
そのかれを、地獄に堕とすような正義はどこにあるのだ?
かれに信仰がないとしても、どこにその罪があるのだ?』」

しかしこれに対する答えも作者がダンテである以上、結局明快な返答はありません。
「そういった所行はきちんと神が見ている云々、オマエが考えることではない」といったような返答でした。
キリスト教って、いっつもこれ・・・。

自分の無学故もあり、神学の研究者や、当時のキリスト教徒にとっては画期的な著書なのだろうが、この面白さをついぞ感じることはなかった。別の解説書でも読んで、新たな発見があればいいと思う。


★満足度65点

インフェルノ (上)  (海外文学)

インフェルノ (上) (海外文学)

  • 作者: ダン・ブラウン
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/11/28
  • メディア: ハードカバー

インフェルノ (下) (海外文学)

インフェルノ (下) (海外文学)

  • 作者: ダン・ブラウン
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/11/28
  • メディア: ハードカバー

さて、ダン・ブラウンの「インフェルノ」。
「ダ・ヴィンチ・コード」や「天使と悪魔」に見られるような芸術品に秘められた謎解きではなく、自分の計画を成就させたい科学者が単にダンテの詩を借りただけだった。
時間稼ぎともいえる暗号ゲームに付き合わせるための借り物といえようか。

人間の業を重ね合わせるのに、ダンテの地獄のイメージは使いやすかったとは思うが、あまりにこじつけといえばこじつけ。
少し芝居がかかった科学者の独白も鼻白む。
「ダ・ヴィンチ・コードがあんなに面白かったのは、やはり「最後の晩餐」そのものに謎かあり、歴史の深淵を覗きこむような一種の恐怖も感じたからだろうと思う。
ロスト・シンボル (上) (角川文庫)】あたりから、ロバート・ラングドンが振り回されるだけの展開が強くなってきた。

だが、今回の犯人がもたらした「テロ」の正体が、人間を病気にさせるような疫病ではなく、「人類の三分の一の確率で妊娠できない」ようDNAを書き換えるウイルスだった、というのには今までありそうで無かった大胆さ。

人口問題は私も心配。
このウイルス、特に大きな混乱ももたらさず、抜本的な解決になるかもしれない、などと妙に納得してしまった。
人間は目に見える危機がなければ、騒ぎはしないから。
インフェルノの後日談で、このウイルスが撒き散らされたと露見した展開になっても、一般人のなかには信じない人も多いと思う。
第三国ではそもそも状況を理解できる民度があるとは思えないし、もっと差し迫った問題が横たわっている。
先進国では「嘘でしょ?」「そうだとしても死なないんでしょ?」「誰が不妊になるかわからないし」なんて言葉か飛び交い、そのうち忘れらてしまいそうだ。対岸の火事のように。
この設定は次回作に引き継がれるのか否か。
きっとこの問題はこれで終わりなのだろうけど。

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