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LA LA LAND ラ・ラ・ランド [青春・恋愛・コメディ]

★満足度85点

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■夢は叶ったけれど、隣にいるのはあなたじゃない

見終わってから暫く経つが、ようやっとレビューを書こうと思う。
文字におこすと凄く陳腐になってしまいそうだなと思い、大分経ってしまった。

まず、見終わった日の事を。
終演して隣の友達を見ると、俯いて黙りこくっていた。
期待しすぎて、つまらなかったのかな?と思ったら、コインロッカーまできたときに突然「いじわるー!!」と泣き出した。そして「こんなのやだよー!」と人目を憚らず号泣。
びっくりして大笑いしつつも、それまで、胸にたまったはち切れんばかりの切なさを一生懸命こらえていたのが瓦解して、結局私も涙が溢れて止まらなかった。
友達がいうように、カサブランカやロミジュリのような「どうしようもない状況で別れざるを得ない二人」ではないからこそ、こんな結末を用意したチャゼル監督はまさに「いじわる」なのかもしれない。

そういう私は、失恋の切なさよりも、封印していた「夢見ていたあの頃」を揺さぶられて苦しくなった。
どこかの机の引き出しや物入れにそっと眠っている、捨て切れなかった高校時代の書きかけの小説やへたくそなイラストなどがうっかり目に入ったときの、かさぶたをめくられたような痛み。
自分へのふがいなさと、「夢が叶う人は少ない」という言い訳をしてきた人生への痛み。

夢を抱いた結果がどうしようもないお粗末なものでも、夢といえるものを追ったことのある人なら、彼らの姿に自分を重ねるんじゃないだろうか。
特にミアのオーディションでのシーンには。

だからこそ、夢を叶えた代償に失った二人の「時間」が、見終わった後にじわじわ胸を締め付けるのである。
セブが見上げた天井の染み、不本意なバンド参加、ジャズバーの名前、そしてラスト怒濤の「タラレバ」。
どうしようもない感情を鍵盤にのせて奏でるセブ。

夢は叶えたのに、隣にいるのはあなたじゃない。 なんだこれ、書きながら切なくなってきたぞ…!

貧しくても一生夢を追っている方が幸せなのか、一緒に夢を追った人がいなくても成功することがいいのかなんて、比べられない。
それこそが恋という熱病に似た「夢」というものを見させてくれるハリウッド(ラ・ラ・ランド)の甘さと辛さなのだろう。

振り返ると、二人の破局の予兆は色々な台詞や描写で表されていた。 初キスをした思い出の映画館は閉鎖し、昼間見る展望台はミアの目には「いけてない」と色褪せて見えた。
女は現実的で、男は女との思い出を糧に生きる。
きっと旦那はパリに行ったときのプロデューサーで、適当なところで手を打って、安定な生活と堅実な男を選んだな!などとミアに悪態をつきつつ、よせばいいのにサントラを聴いてまた切なさに浸る。
溜め息が出るほどズルい映画である。

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蛇足だが、【ラ・ラ・ランド】は王道中の王道でもあるので、セッションほどの意外性は全くないし、プロットの緻密さもセッションの方が上だと思う。でも、愛される映画としては「ラ・ラ・ランド」に軍配をあげたい。


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