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劔岳-点の記 [ヒューマンドラマ]

満足度★65点

劔岳 点の記【Blu-ray】

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劔岳 撮影の記 標高3000メートル、激闘の873日 [DVD]

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■三者三様の想いが交わるとき

今年の夏、薬師岳から縦走して立山剱岳を登った。この映画はその後に必ず見ようと楽しみにしていた。
木村大作、初監督。
映像美とロケにこだわった山の雄大さは登攀者として思い出に重なること甚だしく、剱の全容がよく見渡せる別山からみた銀幕の景色が、私の網膜に焼き付いている景色を蘇らせ、観測隊の苦労が胸に迫ってきた。
測量隊、山岳会各々の立場から反目しあっていた両陣営の思いが次第に反転し、ついには互いへの尊敬と連帯感に変わる。
剱岳という難攻不落の壁を前にして、互いのちっぽけな矜持はなりをひそめていく。
測量隊は山岳会に対し、「仕事という責務がないのに、自分の好奇心だけで命がけの登山をする」ことを凄いと思い、山岳会は測量隊に対し、「己の楽しみでもないのに、仕事で登山すること」を凄いと感じたんだろう。
そして千年以上も前の錫杖を発見し、悠久の時を越えて同じ思いを抱いた名も知れぬ同士がいたことに、深い感銘を覚えずにはいられなかったに違いない。

山岳会の「開山したのはあなた方だ」というセリフがいい。寺を開くことだけが開山ではない。真の開山とは、後世の人々のために道を作ること。
修行という極めて個人的な理由で登攀した行者は、開山者ではない。
そういう気持ちがあったからこそ、岩殿の行者は行者だけに伝わる道を測量隊に助言したのだろう。

本当は登頂したいのに欲を抑えていた長次郎、歩荷しているうちにライバル心を燃やし始める人足も含め、山に関わった人間すべて、入り口は異なるのに山に登ることで言いようのない達成感に体を満たされ不思議な感動に包まれるところに、山の魅力があるのではないか。

ただ、演出にいまいち勿体ないと感じる演出もあった。
手旗信号で長文をあんなに早く送れないだろうと白々しく感じたし、登頂部分は急にスローモーションになるし、もう少し溜と間を使って胸に迫ることができたんじゃないのかと。
雪渓を登り終えた一行が山頂部に目を向ける場面がなかったのは、カメラを向けると現在山頂部にある祠が映ってしまうからなのかな、などと山を知っているからこそ余計なことを考えてしまった。

また、過去の功績や技術力の説明がないため柴崎になぜ白羽の矢が立ったのかが説得力に乏しく、松田龍平や仲村トオルは演技力に乏しく現代人にしか見えず、宮崎あおいは笑顔が張り付いたステレオタイプの女房で、各の時代背景が違うのかと思うほどチグハグ。 淡々と進む物語はそのまま地道な作業の苦労を偲ばせるのでいいと思うのだが、いかんせん風景に重点を起きすぎてしまったのか。
ちなみにあの雪渓が「長次郎谷」と名付けられたことが、後世の評価である。私の中であくまで主役は長次郎の映画であった。

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