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ハンガーゲーム [サバイバル]

★満足度70点
ハンガー・ゲーム [Blu-ray]

ハンガー・ゲーム [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • メディア: Blu-ray

■ヒロイン以上、ヒーロー未満

キッカニスが、最後に大統領を殺すとか、大衆に蜂起を促すとか、そういったヒロイックな展開にならなかったのが正直言うと物足りなくもあり、実際ホッとした部分でもあった。
「ほっとした」のは何故かというと、無作為に選ばれた(キッカニスは妹の身代わりになったのだけど)、脆弱な若者という立場から遠くかけ離れた存在になってしまうから。

ハンガーゲームは、ただの殺し合いではなく、富裕層を楽しませ貧困層に一攫千金を夢見させるため、必要以上にショーアップされている。
これから殺し合いをする若者たちは出身地区に別れ、武道や護身術を習い、トークショーで自分の魅力をアピールし、視聴者から人気を得ようとする。人気が出ればスポンサーがつき、スポンサーがつくと、ゲーム中に特別に物資が提供される。
ゲームが始まるまでも含めて、究極のリアリティーショーとなっているのだ。
なかには本当に自分が人気者になったと有頂天になる者もいる。たった一人しか生き残れないのに。
皆がボイコットすればゲームは成り立たないのに、まんまと乗せられてしまうのは十代の若さ故とも思うし、初めて着るドレスや食する豪勢な食事に目を輝かせてしまうのも仕方ないといえる。

キッカニスは生来備わった気の強さと、貧困ゆえ培われた狩りの腕で何とかサバイバルを生き残る。
ライバルさえも惹き付けるのは、責任感の強さと物欲に惑わされない慎重さと、未完の大器を思わせるオーラがあるから。
だからこそ、このゲームを終わらせる力があるのでは、と期待してしまったが、政府に抵抗する意志を固めるには情報や時間が足りなすぎて、無理があるのは事実だった。

キッカニスは終始戸惑っている。それはそのまま観客の疑問でもある。
どういった経緯で世界は分割されて、貧困地域はどうして落ちぶれた存在になってしまったのか。
少年少女らの殺し合いを代理戦争代わりにするというバカげたゲームに疑問をもつ、善意のある人間が富裕層にはいないのか。
貧困地域は政府に不満をもっているのに、なぜ誰も反乱を起こさないのか。

ケバケバしい衣装をまといファンキーなメイクに身を包んだ都市部の人間に、また、優勝して戻ってきた故郷での地元民の狂喜乱舞に、一人懐疑的な表情を浮かべ続けるキッカニス。
今回は何よりチームのために、言われるまま本心や本意を隠し続けた彼女。
続編があるにせよないにせよ、あの世界で彼女はただでは終わらないのでは、という予感を示して映画は終了した。

母や妹を叱咤激励し、家族の生活全てを双肩にしょったキッカニスの姿は、そのまま【ウィンターズ・ボーン】に通じるものがあり、これはジェニファー・ローレンスのための映画だとつくづく思った。


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