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妖怪補遺補遺@LOFT/PLUS ONE [■お出かけ・雑記]

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京極夏彦さんと、月刊ムーのホームページで「妖怪補遺補遺」を連載中の黒史郎さんの対談。系列店のライブハウスのLOFTやSHELTERには足繁く通ったことはあるが、LOFT/PLUS ONEは初めて。

なかなかのディープっぷりですな。こういう半地下にありがちの、床がいつも濡れていて異臭がふわん、と漂うところがいかにもアングラ。

対談の感想を結果から書くと、3時間近くず~~っと笑いっぱなし。いや~本当にこんなに笑い続けたのは久しぶりかもしれない。京極が突っ込み&語り、黒さんはド・天然のボケです。

黒さんの著書は駆け込みでタイトルのものと『怪談撲滅委員会』を読了してきた。筆者と世代が同じなので、後者のラノベは登場人物の織りなす会話に共感する単語がポンポン登場して楽しかった。 話全般的にムー臭がぷんぷんするワードが振りまかれており、この本で一つも知らない単語が無ければ、「自分は立派なムー民」と宣言できると思う。思うにこれは、自称ムー民への登竜門的存在のラノベなのだ。

二人は妖怪会議(というサークル?)で旧知の仲らしい。何も決めてこなかったという二人のトークは、なぜか車団吉から始まる。発端は黒さんが「お笑い漫画道場」に触れたTwitterのつぶやきを、京極夏彦が読んでしまったことから。しかし黒さんは車団吉の知識は皆無らしい。車だけで1時間はいける、とのたまう京極を「だから僕知りませんよ?」と押しとどめる黒さんのやりとりで本当に30分経過(笑)。
「ていうか京極さん、僕のTwitterなんで読んでるんですか?暇なんですか?暇じゃ無いですよね?」

●ディープな妖怪談義

話はようやく本題に入る。『妖怪補遺補遺』は、まったく聞いたことが無い妖怪のオンパレード。しかしそんな名も無き妖怪たちを土地土地の文献からきっちりリサーチして発掘してくる着眼点に、京極は一目置いているらしい。

私も読んだが、取り上げられている妖怪や怪異はつゆほどもなかった。妖怪の伝承には、妖怪の着ている服や色や髪などの容姿についての記述はほとんど無い。

だから想像の余地があって、そこにどう色づけしていくかが受け手や書き手の自由でもある。そういった自由を嘘の一言で否定せず、虚実ないまぜの存在が妖怪なのだと。
だから妖怪(という存在そのもの)は死なないし、こちらの熱意があれば枯渇しない。

しかし、妖怪の大家が書いた妖怪本の孫引きで新たな妖怪本を作ったり、または歪曲して別の妖怪を仕立てるのは、捏造であり創作だから全く違うものである、というようなことを、二人は仰っていたように思う。

おそらく、伝承があるということはその土地に生きてきた人々の紡がれた歴史の一つであるから、どんなに短い伝聞だろうが伝承や口伝をリサーチすべきなのだ、と言っているのだろうと私は受け取った。

ちなみに水木しげるが書いた妖怪本のバイブル的存在著書に誤植があって、存在していない妖怪が誕生してしまったこともあるそうな。確か、過ちの基になった妖怪とセットでファミコン時代の「桃鉄」に登場してしまったと言っていた記憶があります。

他にも京極ワールドの持論が展開。 「水木さんは人がいいから、他人から『こんな妖怪がありました』と言われると、真偽を確かめず信じて書いちゃう」「怪奇現象と妖怪は違うものなのに、最近はただの火の玉などの怪奇現象を即、『妖怪』と呼ばわる輩がいて困る」などなど。

●昔の少年誌は攻めに攻めていた
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二人の話は過去へと飛ぶ。
京極氏曰く「グラドルが登場し始めて少年誌は終わったと思った」。
そんな彼らが夢中になったかつての少年誌。見開き巻頭カラーにオカルトコーナー、しかも「日本のミイラを見に行こう!」というキャッチで「即身成仏」特集。しかもドアップ!

極めつけは怪奇系児童書と呼ばれていたドラゴンブックスからの『飢餓食入門 』。二人の話を横で聞いている出版社の方が、ネットで検索したものをスライドで見せていく。確かにこれはやばい!イラストのおどろおどろしさは一周回って滑稽な面白さに転換。会場は変なテンションの笑いの渦に。


また、今の妖怪は綺麗すぎる、という話に。可愛いキャラクターになりすぎて、気持ち悪さや怖さがない、と。ここれには激しく同意。

そこから「今の漫画も綺麗すぎる」「昔のギャグ漫画のうんこも汚かった」「まことちゃんのうんこはまぁ~~汚かった」「うんこが綺麗になったのはアラレちゃんから」など話は飛ぶ。

黒さんいわく、「妖怪は愛すべき可愛い存在」(決して妖怪ウォッチなどではないイラストがスライドに映し出される)。

なので、少年期の「心霊写真ブームは本当に怖かった」。理由は「可愛くないから」。黒さん「反則ですよ!人間より前に出てきてるんだもん!」

この人もだいぶ面白い。心霊写真に泣いていた同級生の女の子に、慰めのために妖怪の絵を描いて渡して余計泣かせたとかw。黒さんにとっては妖怪は「かわいい」から、心霊写真の怖さを緩和できると思ったとのこと。
でも、わからなくもない。妖怪は行動に一定のルールがあって逸脱しないんだよね。だけど幽霊はどんなルールがあるかわからない。ずっと追いかけてくるかもしれないし、突然脈絡もなく現れるかもしれないし、呪われるかもしれない。でも妖怪はこちらがミスを犯さなければ、やり過ごせる。そういったルールを自ら課しながら、ひっそり生きている。他人に知られなければその妖怪は死んだも同然だ。だから、僕だけでも知っていてあげたい、という黒さんの優しさが伝わった。

●迷物編集部員登場

休憩後、雑誌『怪処』の編集部員も含め3人体制に。この編集、かなり飄々とされていて京極が「書けない、書かない、書きたくない」と言ってるのに何度も執筆を依頼してくるらしい。

そんな彼は2歳の娘にグミをせがまれ、嘘をついて鶏皮を与える人物。
また、「麦チョコは大体、数粒落ちるんです」と言いつつ、床に落ちているチョコを拾って食べてしまうらしい。でも身なりはさっぱりとして清潔、知的メガネ生命体なのだから、人間とは恐ろしい。

●質問コーナー

事前アンケートにあった質問コーナーから適当にコメントを探す3人。
「整理整頓術を教えてください」
京極「不要な物を買わないんです。そして不要な物を買わなければ物は絶対入ります!」
編集「水木しげるさんのコーナーになんでしなびたミカンらしきオブジェがあるんですか?僕いつも捨てようか迷うんですけど・・・」
京極「あれも必要なんです、必要な物なんです!」

「映画ダイナーが公開されましたが、どう思いますか?」
京極「特に何も」w
などと、楽しい夜は更けていきました。

最後に二人のサイン会もあり、色紙を用意してこなかったとんまで間抜けの私は、くたくたのメモ紙を恐る恐る京極氏に渡す。彼のmy筆で書かれた達筆の「妖怪」の2文字は、その日のうちに厚紙で補強してファイリング、我が家の家宝になりました。

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