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10/28 第32回東京国際映画祭『男はつらいよ お帰り 寅さん』 [★映画祭・イベント]

▼映画祭のサイト
https://2019.tiff-jp.net/ja/guest/#date31

▼映画の公式サイト
https://www.cinemaclassics.jp/tora-san/movie50/


レポが遅くなりましたが、W杯の最中、これだけは見逃すまいと先行予約した映画でした。

感想から述べると、本当にいい映画でした。涙が止まりませんでした。

語彙力が乏しい自分が恨めしいのですが・・・エンドロールでは文字通り、泣きっぱなしでした。


こんなに笑って泣いて、泣きすぎて懐かしくて胸が締め付けられて、ああ、私って本当に寅さんが好きなんだなぁとつくづく感じました。私の中で、架空の人物でこんなに恋しく思えるのは寅さんだけかもしれない。
それは渥美清という俳優そのものが好きだということにもつながると思うのですが、渥美清さんが私生活を一切見せなかったことで、より渥美清=寅さんが一体化して、寅さんの存在感が現実味を増したとも思うんですよ。


だから、私およびファンの中では寅さんはファンタジー性がないんです。誰の親族の中にも一人はいそうな「ちょっとだめなおじさん」が、本当に存在してしまってるんです。だから、「便りはないんだけど、どうしてるのやら」とでもいうように、ふと思い出したときに強烈に恋しくなる。寅さんを思い出すときに一種の郷愁を帯びるのは、「子どもの頃はよく遊んだのに」という子どもの立ち位置に自分が還ってしまうからなんです。少なくとも、私はそうです。それは満男そのもので、私は満男を疑似体験しているようなものなのかもしれない。


で、本作も満男が主役です。満男は7年前に奥さんを亡くし、めちゃくちゃいい子に育った娘と一緒に暮らしてます。脱サラして、作家として一歩を踏み出してヒット作がうまれ、サイン会まで行うほどになります。

後藤久美子の演じるイズミはばりばりのキャリアウーマンなのですが、台詞の読み方が初期のゴクミの大根役者ぶり(失礼!)にそっくりで、歳を重ねたのでもっとうまく演技できるはずだろうに、あえてその頃に寄せている感じがしました。それが国際社会で活躍していて、たまに日本語が辿々しくなる女性像とマッチしています。満男は寅さんのようにアグレッシブではないですが、肝心な所で躊躇したり曖昧な態度を取るところが非常に寅さんに似ていて、DNAを継いでるなぁと思わせて笑えます。そして、優しいところも。


で、満男の出版社の編集担当者役・高野演じる池脇千鶴が非常にうまい。満男との距離を壊したいような一線を越えたいような、もどかしい女心と空気感を表現してます。


カフェとなった「くるまや」のなかで登場する色々なアイテムやシュチュエーションから思い出される、寅さんのいた日々。

誰も「寅さんがいれば」「今どこにいるのやら」とか、寅さんが実際どうなったのかという直接的な台詞は言わないんです。

ただ、思い出す。それがヒロインや名場面とともに挿入されるんです。寅さんを取り巻く家族やリリー、友人たちと、その思い出を一緒に共有しているようで、切なくてたまりませんでした。

寅さんのいない喪失感から逃げずに受け止めるようなラストに、心の底から感謝しました。

みんなの心に寅さんをよみがえらせてくれた監督に本当にありがとうと言いたかったです。


というか実際に、監督が終演後にフロアにいたので伝えました(笑)。「ありがとうございました」と、ただそれだけ。とてもふくよかで温かい手をされてました。

会場には、アメリカ人の寅さん愛好家の方もいらっしゃいました。アメリカ人にも寅さんのおかしみは通じるのだなとちょっと感動しました。ちょっと哀愁のある雰囲気は【 大災難P.T.A. [DVD] 】のジョン・ヒューズに似ているかも。

ちなみに今回一つだけ不要だと思ったところは、オープニングの桑田佳祐かな。他の人に歌って欲しくなかったなぁ。




●舞台挨拶

話は前後しますが、上映の前に舞台挨拶がありました。ずらり並んだ名俳優達に感動ひとしお。
山田洋次監督をはじめ、倍賞千恵子、吉岡秀隆、後藤久美子、前田吟、夏木マリ、浅丘ルリ子という錚々たるキャスト陣。すい臓がんで亡くなった女優・八千草薫さんの訃報を受け、監督は「先ほど聞いたばかりで、とても驚いています。僕ら世代の日本人にとっては、若い頃から憧れであり続ける方でした」と仰ってました。倍賞さんも「とても残念ですけど、本当に優しい方でした」と。八千草さんの姿はヒロインとして劇中にも挿入されていました。


また、23年ぶりに女優復帰のゴクミはクランクイン前に、山田監督に不安を伝えたそうです。でも監督が『大丈夫だから、任せなさい』と背中を押してくれて、監督が仰るなら大丈夫か、すべて委ねようと思えたそうです。キャストが話すと通訳がすぐに話すので、すごく話しにくそうでした(笑)。それでゴクミがたまにフランス語のアクセントが出てしまうと、吉岡秀隆が「そういうところがかっこいいんだよなぁ」と冷やかして、とても中が良さそうで。夏木マリもイズミちゃんが出るって言うから、私にも役が回ってきたと茶目っ気たっぷりに応えていて、本当にアットホームな現場だったんだなぁとしみじみしました。

吉岡秀隆が久しぶりのゴクミとの共演を聞かれると「いつもきれいな方だと思っていましたけど…、今回も恋をしていました。やっぱり満男は寅さんの甥っ子なんだあ」と照れて。
リリーこと浅丘ルリ子はずっと立たされていたから足が疲れてしまって、「もういいから早く観ましょ!」とちょっとイライラした様子。それを倍賞さんが「せっかちなんだから~」となだめるところがまた良くて。
最後に会場のみなで「男はつらいよ」の主題歌を大合唱して舞台挨拶は終わりました。


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