サードマン [■BOOK・COMIC]
■読めば読むほど、脳の不思議さは増す
サードマンの出現。世界的アルピニスト ラインホルト・メスナー、山野井泰史、自分の腕を切断して生き延びたアーロン・ラルストン、あまたの宇宙飛行士、南極大陸の基地職員、様々な局地探検家などなど体験談に枚挙に暇がない。これほどの数の人間が体験していたことに一種の感動を覚えた。
そもそもこの現象が一般的に有名になったのは、アーネスト・シャクルトンとう方の壮絶な漂流記をもとに、アメリカの詩人T・S・エリオットが「荒野」で詩にしたからだという。
本当はシャクルトンが見たのは「4人目」であったというが、3人目の方がきりがいいし、キリスト教の三位一体や「第三者の目」という慣用的な言い回しにもぴったりと合致したもののように思う。
局地探検家や被災者など、生命を脅かされた誰しもがサードマンを体験したわけではない。本書はその原因を推理していくのだが、私も著者と同じように、極限にいながらもどこか自分が生存できることを信じている者に現れやいのでは、と思った。本当の意味で死んでもいいとは絶対に思っておらず、意志ではいかんともしがたい致命傷を負っていないこと、精神力がもともと安定している人たちに起こりやすいと思われる。
本書は最終的には脳神経に原因を求めているが、ロマンを否定するものではなく、人間が窮地に陥ったときに精神を安定させ、正しい知識を良い起こす能力として自在に操れたら・・・という未来の夢の技術の到来に思いを馳せている。 サードマンは「インターステラー」などSF映画でよく抽象化される「テレパシーまたは次元を超えた存在」で、「キャストアウェイ」で主人公画ボールに名前を付けて擬人化して心のより所にした人間の能力、と受け取れる。サードマンと定義されなくても、人間は昔からそういう能力を擁して生きてきたのだと思う。
コメント 0