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オペレーション・ミンスミート [戦争ドラマ・戦争アクション]

満足度★85点

■遺体に与えた嘘の人生と、戦時下でのリアルな人生が交錯し小説のような面白さ
ポスター画像

味方さえも疑わなくてはならない状況下でナチスを欺くことができるのか 第二次大戦中、「ナチスを欺くために偽造文書を持たせた遺体を流す」というイギリス政府による奇抜な作戦が行われた。
名付けて「ミンスミート(ひき肉)作戦」(それにしても生々しい作戦名だな)。

これが実話であり、さらにはあの009の生みの親、イアン・フレミングが提唱した作戦だというから驚く。
報道されているのはほんの氷山の一角で、世界の上っ面の茶番の1%しか知らないんだろうな、市民の私たちは。ということを否が応でも知らしめられる。
中立国のスペインに存在するドイツ人スパイに、なんとかして「偽の攻撃対象(ギリシャ)を書いた機密文書」を目撃させなければならない。連合軍はその裏をかいて、シチリアに上陸したい。
スペインにはイギリス諜報部の息のかかった三重スパイと、その三重スパイを二重スパイと信じている勢力、そして「反ヒトラー」勢力もウロウロしている。とはいえ、イギリスは敵国のことをまるで知らないわけではなく、MI5はスペインにいるドイツ人スパイのことを詳細に把握している。
そのスパイを暗殺するなどはせず、敢えて泳がして、必要な情報与えたり隠したりするから(不謹慎だが)諜報戦は面白い。
三重スパイは女も男も相手にし(彼が一番活躍したのではないだろうか)、まさに伏魔殿。
そして主役の一人モンタギューにも、スパイ疑惑がふりかかる。
弟が共産党員との噂があり、恋敵ということも相まって、同僚のチャムリーは猜疑心に陥る。
母国で物理的に離れた場所の敵への策略を練りながら、仲間をスパイせねばならない悪条件に加え、更にはなんとレストランのウェイター、テッドが実は謎のスパイだったことも判明する。
モンタギューは結果白だったが、作戦は最後まで成功したのか不確定要素が多く、終始ハラハラさせられた。

チャーチルのセリフで、スパイ活動の渦に飲み込まれると、いつのまにかめぐりめぐって自分の尻を見ている」というようなのがあったが、諜報活動だけに囚われていると視野狭窄になり、何も決断できなくなるのは事実だろう。だからこそ、チャーチルはミンスミート作戦が成功したか否かに関わらず、成功したものと信じてシチリア上陸を決行する。
この後にチャーチルの承認も得てアメリカが日本に原爆を落とすことを考えると手放しで喜べない自分もいるが、リーダーシップのなんたるかが、垣間見えた気がする。

この映画には二つの噓の死体がある。 一つは作戦に使われ、上官に仕立てあげられた遺体。
もう一つはチャムリーの戦地で行方不明になった兄。
多数の命を左右した死体と、一人の母親の心を救った死体。
とても皮肉だ。
スペインに眠るイギリス人将校の墓にそんな秘密が隠されていようとは、誰も夢にも思わなかったに違いない。

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