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デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場 [■BOOK・COMIC]

満足度★80点
栗城の人物評価★30点

デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場 (集英社学芸単行本)

デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場 (集英社学芸単行本)

  • 作者: 河野啓
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/11/26
  • メディア: Kindle版
■名声欲にかられた「おめでたい」人で、登山家ではなく実質テレビ屋

「単独無酸素、7大陸最高峰」 登場した時、この言葉だけでインチキ臭いと思った。
エベレスト以外は酸素を使わないことを、登山愛好家なら知っているから。
偽者というより「誇大広告」で「詐欺師」でただの「テレビ屋」。
そう思い、この人の登場するテレビ番組は全く見なかった。

なので、エベレストで滑落死の報を聞いて非常に驚いた。あのレベルの人がそんな無謀なことをやったのかと。
そして改めてこの本を手に取った。むしろ死してから興味をもった。
そしたら案の定お笑い芸人になるために一時期吉本の養成所に入ったそうじゃないですか。
これは完全にテレビ屋ですね。

「それにしたって6大陸最高峰行ったのは凄い」と人はいうかもしれないが、 はっきりいって処女峰でもない手垢にまみれた山のルートなら、残置ロープやらなにやらたくさんあるし、若いうちは体力で凄い山も登れちゃう。
一人だとしても他のツアーやパーティーの後を付いて行けばいいだけだ(実際他のパーティーがおいて行ったテントを勝手に使ったこともあったという)。
曲がりなりにも「登山家」というならば、未踏のルート開拓や、既知のルートでも誰もなしえてない条件で登頂することが必要だと思う。
で、結局若さと勢いだけじゃどうにもならなくなって、技術を磨いてこなかったため滑落に至った。ただそれだけ。

「この人は山が好きなのではなく、有名になる手段として山を選んだだけ」と確信。
本来、山が本当に好きなら日本の山にどんどん登りにいくのだ。それを講演会に時間を費やしてほとんど登りに行っていない。しかも北海道の羊蹄山に、冬とはいえ玄人なら一般人でも登れる山を登れなかったという。
彼が登山界に近寄って技術を磨いてこなかったことからも、王道の研鑽を怠ったということだろう。

それにもまして明らかになる驚きの事実…。
・アイゼンやピッケルなど、命を預ける道具を人から借りる。手入れして返さない(手入れの方法も知らなかったのだろう)。
・間違った健康法(タンパク質を食べない「マグロのような体が理想」という弁)
・間違ったトレーニング(藤原紀香の行っていた加圧トレーニングを実践) 加圧トレーニングを否定するわけではないが、それをやるぐらいなら登攀技術を磨いたらどうだろう。彼は大学の登山部が登れる壁すら登れなかったというのだ。
・シェルパが亡くなった翌日、テントの外で撮影用の凧揚げをしていた。シェルパたちの中で「こいつは登る気がない」という雰囲気が漂ったという。

栗城の先輩の若手起業家、山本壮一氏の栗城への評価は「おめでたい人」。
「そのおめでたい人をなぜかみんなが支えてしまうんですよ。そこが彼の最大の魅力というか、最大の恐ろしさというか」
この一文にすべて詰まっている気がした。
純粋で面白いことを見せたい、共有したい。その思いはぶれなかったとは思うが、エベレストはその思いだけでなんとかなる場所ではないし、人命を軽視しないために人一倍努力しなければならないのだ。実際シェルパもなくなっている。だけど、30を越えてそんなことも理解できないのかと人は離れていった。

故人が何に挑戦して何で命を落とそうが自由だ。だがこの人の悪行は一般人が勘違いすることをわかっていて確信的に「7大陸単独無酸素」というキャッチフレーズを用い、正当な評価を受けるべき登山家からその機会を奪ったことだ。

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