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MEN―同じ顔の男たち― [ホラー・モンスター]

満足度★45点
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■聖書をベースに、種の本質を描いたホラー

終映後はえ?これで終わり?と思って呆然としたまま劇場を去ったが、電車の中で正気に戻ってみると、案外これはステレオタイプな男女という種を描いたものかもしれないと思った。

映画「マザー!」の後もしばし放心したが、本質的には両者とも似ているのでは。
要するに聖書をベースに、アダムとイブを描いたものであると、私は理解した。


極端にいうと、男は女に無償の愛を求めるが、女は男に安心安全を求める。女性がずっと私の側にいてね、というのは生活の安定や安心を得たいからで、男性が俺だけを愛してくれ、っていうのは、外でやんちゃしても多少怒りっぽくて暴力ふるっても、何もいわず許してねっていう母なる愛的なものに偏る(古典的には)。

少年サミュエルが求めたように、自分の気が向いたときに嫌な顔せず相手してくれて、神父が求めたような肉欲にも応えてくれる存在。なにをしてもしょうがないわね、と許してくれる存在。
それはイブというよりも聖母マリアに近い。
男はマリアを求めているのに、イブはマリアになれない。ハーパーはどちらかという好奇心旺盛で禁忌を破り、楽園を出ていくイブの象徴のようだ(もしはリリアン)。
(ちなみにサミュエルはヘブライ語で「彼の名は神」という意味だが、関係あるのだろうか)。


突然田舎に現れた女性にあれこれとちょっかいを出す男たち。冴えない田舎の中年男。高圧的な変態神父とただの変態。鈍感な警官。ハーパーの目に映る村の全ての男性は同じ顔だけど、それは女性に敬意を払わない象徴というだけで、そこに謎解き要素はない(副題にあまり気を取られてはいけない)。

最後、ものすごく生々しいものを見させられたが、これからも½の確率でエンドレスに産まれる男たちという暗喩ではなかろうか、と。

そしてたくさんの失礼なかまってちゃんたちに、これからも共存しなければならないイブたちは、大変だね!っていうメッセージを、ホラー仕立てにして、聖書のスパイスを振りかけて、もしかしたらケルト神話まで挿入しちゃった、ひねくれた女性賛美の映画なのかもしれないとさえ、思う。

ハーパーが切り裂いたサミュエルの右手は、鉄格子に裂かれていたジェームズと共通する気もするので、男たちの所行はジェームスの怨念が憑依したものとも受けとれるが…。

冒頭の美しい森や自然が、閉鎖的で恐ろしい場所に代わっていくのも、ハーパーの結婚に似ているのかも。最初は居心地がいいが逃げ出したくなる。

監督に対しては、無垢な凶暴さで戦慄させてくれた「エクス・マキナ」のように楽しませてくれたかというと、期待外れだったといわざるを得ない。ホラーにはホラーなりの見た後のすっきりさはないし、サスペンスならサスペンスなりのすっきりさもない。グロい寓話をみましたね、というただそれだけ。

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