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アルピニスト [ドキュメンタリー]

満足度★90点


アルピニスト.jpg

https://alpinist-movie.com/


■目的がすり替わってしまうこの世の中で

ロープなし、下見なし、電子機器無しでフリーソロ。
とんでもないクライマー、マーク・アンドレ・ルクレール。
フリークライミングなのに下見なしって、本当にとてつもない…。 映画【フリーソロ】で極限のクライミングを見せてくれたアレックス・オノルドが霞んでみえてしまうぐらい。
驚いたのは、この映画でも出演しているオノルドが、スポーツとしてフリーソロをやっているが、ルクレールは違うと発言したこと。【フリーソロ】をみたときは、どちらかというと、今作のルクレールに近い感性の人だと思っていたから。
オノルドはロープで下見し、ルートを練り、安全な登り方を何度も反芻して頭にたたき込む。
相反してルクレールのほうは、事前に天候や地形図を観てはいるが、初めての山(ルート)での経験や体験そのものを楽しんでいる。精神構造が違うんですね。

しかも、オノルドよりも危険なことをしているのに「ルクレールなら落ちない」という謎の安心感を与える。
フリーソロよりも、格段に落ち着いて見ていられた。 きっと、ルクレールの精神のあり方が画面を通して伝わってきたのだと思う。禅の修行のように、登る前のことは忘れ、登った後のことは考えない。
一つ一つ、本当にその瞬間を心穏やかに噛みしめている。
そのスタイルは、初めて人類が未開の地へ赴くときのように、一つ一つに驚きと喜びがこもっていると同時に、野生動物のようにひどく自然体でもある。
鳥がなぜ飛べるのかを鳥自身が考えないように、ルクレールも自分が登れること自体を疑問に思わないのだろう。
だから、危険なことをしてるのはわかるけど、自分は危険なことを楽しんでいるわけではない、と彼は答えたのだと思う。
ーークライミングをすると、人生がシンプルになる。
ーー達成したこと自体が人生を変えるわけじゃない。そこに到達するまでの旅が心に残る。

いい言葉。私も登山をしますが、美しい風景を見ると共有したくてヤマップやインスタについ、あげてしまう。 目的がすり替わってしまうこの世の中で、自分の好きなことを体験と経験としてだけ個人のうちに留めておける人間が、果たして今いるのだろうか。

彼は劇中、登山前に食べる食事についてこう答えている。
「いつ雪崩などにあって死ぬのかわからない。だから人生最後だと思って好きな物を食べている」
「自然が相手だ。こちらがコントロールできるわけじゃない」

まさに懸念していたことが彼に起こったわけだが、心に残る生き様だと思いました。
登山興味あるなしに関わらず、彼のことをもっともっと人に知ってもらいたい。
少なくとも、私は忘れないし忘れたくない。

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