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帰れない山 [ヒューマンドラマ]

満足度★90点

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160分という長編ながらも、その長さを全く感じず。

ただ自然の中で牛を飼いチーズを作り慎ましく生きる…ただそれだけのことが何故実現できない社会なのだろう。


人間の作った社会は、いやがおうにも金に振り回され、土地から、場所から、人から人を引き離してしまう。本編のメッセージとは角度が違いますが、そんなやるせなさが頭の中をグルグルと回っていました。


分かちがたい時間を共有した二人の男性の物語。山での場面ではBGMをほぼ廃し、自然の音だけが流れていき、静寂のなか自問自答する彼らに自分を重ね、まるで人生を一緒に旅するような気持ちになりました。


私も登山をします。この映画のように、歩きながらふとした瞬間に、人生について答えのない問いを考えることもあります。そしていつしか考えることに飽くと、無の境地になります。何も考えない瞬間というのは本当にすばらしく、解放感とその場に溶け込んでいく浮遊感に包まれます。

そんな描写が、生活をする場としての山として丹念に織り込まれ、押しつけがましくなく感じられてよかったです。


山頂のノートに、自分の父親の思いを発見したピエトロ。後悔してもしきれない諦めと、自分の代わりに父に寄り添ったブルーノへの羨望や軽い嫉妬など、山を通じて交差する人生に味わい深さを感じました。


湖の場面、雄大な景色も二回目にくると最初よりも小さく見える経験が私にもあります。

それが、少年時代出逢った頃は何もかも楽しかった二人の関係性が、大人になって距離は再び近くなったものの、色褪せてしまったかのようでした。


ブルーノは本当に山に「還りたかった」のか、それとも…。それは推し量るしかありませんが、ピエトロが帰る理由の無くなってしまった山。いつかは取り残されてしまったブルーノの魂や思い出を甦らせるために、帰ってあげて欲しい…と思いました。


タグ:映画 登山
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インディ・ジョーンズと運命のダイヤル [アクション・アドベンチャー]

満足度★80点

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■インディにとって、これが一番幸せなんだろうというラストに寂しさも去来する

STAR WARS創造主ジョージ・ルーカスやスピルバーグが関わっているとあっては、ラストインディを見に行かないわけはない!
あーそして、俺たちのインディは、俺たちのインディでした(感涙)。
 
さすがによぼついてるハリソンばかりだと無理もあるので、若かりし頃のインディを冒頭でたっぷり堪能させてくれた。
それと対比して時代の流れに取り残された老教授という現代(69年)のインディの姿はかなり切ない。
頭もぼさぼさだし、タンクトップ姿はみすぼらしいし、大学でも生徒はまともに授業を聞かない。若い世代の新たな冒険が、「宇宙」に舞台を移したことが顕著な場面設定で、パレードの中をインディが馬で駆け抜ける姿は、本当に象徴的な演出だと思う。
 
キー・ホイ・クアン演じるショートとインディのタッグが、かつての教授仲間の娘ヘレナとスラム育ちの男の子テディに代がわりはしたものの、アリストテレスの秘宝をかつてのナチから守ろうとする気骨のある姿は、やはりインディそのものだった。
 
ただ欲を言えば、マッツ・ミケルセンのフォラーをもう少し深堀りして欲しかった。ただ後を追っかけるだけのステレオタイプの悪党になってしまった。
彼の秘宝探しの動機も曖昧。ヒトラーは失敗した指導者だったからナチとして許せないのか、それともヒトラーが悪逆の限りを尽くしたから歴史を正したいのか…セリフからはイマイチ汲み取れず。しかし後者だと、インディが直接手を下して止める強力な理由がなくなる。だから、事故死にしたということだろうか。
 
ちなみにフォラーのモデルは、人類を月に送り込むアポロ計画でロケット開発を担当した科学者のベルナー・フォン・ブラウンだと思われる。彼は元ナチス親衛隊の隊員で、第2次世界大戦中、連合国側に多大な犠牲をもたらしたV2ロケットの生みの親でもある(実際、大戦後の西側諸国と旧ソ連はドイツ第三帝国の優秀な研究者を取り込もうと先を争っていた。フォン・ブラウンは、未使用のV2ロケットを渡すことを約束し、100人近いトップレベルの科学者や技術者を引き連れて米国に亡命。1950年にアラバマ州の小さな農村ハンツビルへと移され、軍はこの地にあった武器庫をミサイル開発センターに改変したとのこと)。

フォラーを少し持て余してしまったのか、信念めいたものを感じられなかったのが残念ではある。アントニオ・バンテランスの扱いも雑だったなぁ。
 
それはさておき、古代ローマのアリストテレスの時代に残りたいという「ロマン」に未練たらたらのインディでしたが、現代に強く彼を引き留める隠し玉がラストに登場!
息子がいなくなった理由も重なって、インディのみならず、往年のファンの目頭も熱くなったのでした。老人同士のキスシーンは、引きで正解。
 
余談ですがラスト、まあるく画面が閉じていく演出は、マンダロリアンシーズン3の最終話と同じだった。
 
個人的には、世界の秘密が次元や宇宙に区代されるより、古代の地球にあるという考古学ロマンの残滓が感じられる映画はもう出てこないだろうと思ってしまったことが、寂しさを加速させました。

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