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ソーシャル・ネットワーク [ヒューマンドラマ]

満足度★75点

ソーシャル・ネットワーク [Blu-ray]

ソーシャル・ネットワーク [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2011/12/21
  • メディア: Blu-ray

■精神的に未熟な天才

彼女に振られた腹いせと、エリートを見返したいという劣等感からFacebookは生まれた。
世界最年少の億万長者は、抑揚のないボカロのような話し方をする変人で、歯に衣きせぬ物言いで人を白けさせ、元カノへの未練を断ち切れない孤独な男。
数ある訴訟騒ぎは、人心へ心を砕くほどのキャパシティーがなさ過ぎて、結果的に裏切ることになってしまっただけ。社会の抱く、若くして成功者という虚像とはかけ離れ、実像は人とうまく繋がれない不器用で、寂しい青年だった…。

……という描き方をされているが、あくまでこれはフィクション。
ザッカーバーグ本人からすれば、世の羨望から目がそらされ、いいことずくめか。

フィンチャー監督は、若者の孤独感を見事に描いている。文武両道のリア充を妬んでいるにも関わらず、それを餌にして女性もつるというねじれた承認欲求、新しいSNSへの欲望と興奮がネットという世界で奔流していくにも関わらず、本人がその流れの外にいる対比などが素晴らしい。

元々のアイデアを他人から盗み、それを開き直って「具現化できる技術と知性があるのか?」と言い放つが、「やったもん勝ち」の理論で突っ走る幼稚さと傲慢さも青臭く、生々しい。この生々しさがフィクションということを忘れさせる。そしてそれは、まだ世間に責任を負う年齢ではないからこそ許される雰囲気がある。
ラスト、元カノのFacebookを何度も更新するキー連打まで憎いほど完璧な、まさに青春映画。

ちなみにナップスターCEO、ショーン・パーカー役にジャスティン・ティンバーレーク。 このサービスに多少は犠牲を強いられてきた側のミュージシャンを充てるあたり、憎いキャスティング。 Facebookを複数形にするな、そして広告は入れるなという助言がクール。

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スノーデン:独白 消せない記録 [■BOOK・COMIC]

満足度★90点

スノーデン 独白 消せない記録

スノーデン 独白 消せない記録

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: Kindle版
スノーデン 日本への警告 (集英社新書)

スノーデン 日本への警告 (集英社新書)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2017/04/24
  • メディア: Kindle版
■自分事と捉えるべき事象

政府で働く人間たちが全体意識として監視という行為を容認しているわけではなく、あまりにも細分化されたタスクにより「罪の意識」がないことが問題でもあると感じた。「誰からの、どういう理由で、何のために」という重要な部分が抜けたまま、上位に位置する人間のきまぐれで個人の情報は赤裸々に暴かれてしまう。


このような話になるとよく、「自分にはやましいことがないから問題ない」という人がいる。

しかしスノーデンも記したように「隠すことがないからプライバシーなんか必要ない、不要だと主張するのは、言うことがないから言論の自由なんかどうでもいいというに等しい」ということと同じだ。また、今現在は自由に対して意識していないかれど、知らない間に物言わぬ機械にタグ付けされ、「反社会的人間リスト」のどこかに分類され、当局によって好きなタイミングで好きな内容にアレンジされ、利用されてしまうかもしれないのだ。それは誰かの罪をでっちあげるために、かもしれないし、監視社会を必要悪だと刷り込ませるプロバガンダに、かもしれない。

何の令状もなく個人に承諾もなく個人情報にアクセスできることは、スノーデンの言葉を借りると「道をはずれたことをやったら、きみの私生活をネタにしますよ、という政府の脅しに等しい」のであり、許してはいけないこと。

これを意識して生活するとしないとでは、だいぶ世の中が違って見えてくるだろう。

そして誰かが(それが見知らぬ第三者でも)日本国内で理由もなくプライバシーと人権を侵害された事件があったときに、すぐに気が付くことができるし、微力ながら力になれるかもしれない。
民主主義とは、目を光らせ手を加え続けていかないとあっという間に形骸化していく。それが、市民や国民に課せられた「終わらない仕事」で「終わらせてはいけない仕事」なのだと思う。

〈抜粋〉
・一般利用者の観点からすると、クラウドはただの保存機構で、データが個人デバイスではなく各種のちがうサーバに保存されるようにするもので、そのサーバは極端な話ちがう企業が所有して運用してもいい。結果として、データはもはや本当に自分のものではなくなる。企業がそれを統制し、それをほぼどんな目的のためにでも使えるのだ。
(中略)企業は、どんな種類のデータを保存してくれるのかを決められるし、気に食わないデータはあっさり削除できる。自分のマシンやドライブに別のコピーを持っておかないと、このデータは永遠に失われてしまう。

(中略)企業は一方的にアカウントを削除しデータにアクセスできないようにして、一方で記録用にコピーを残し、こちらの知らないうちに合意もなく当局にそれを提供できる。最終的にぼくたちのデータのプライバシーは、データの所有権に委嘱する。これほど保護の薄い財産でありながら、これほどプライバシーな財産というのもない。

・台所に鎮座する将来のスマート冷蔵庫が、ぼくの行いや習慣をモニタリングしてカートンに直接口を付けて飲むとか、手をきちんと洗わないとかいった傾向を使い、犯罪者となる確率を評価するところを想像してみた。

・道をはずれたことをやったら、きみの私生活をネタにしますよ、という政府の脅しに等しい。

・10年にわたる大量監視の後で、この技術はテロに対する兵器としての威力よりはむしろ、自由に対する兵器として協力だったことが明らかになった。こうした計画を続けることで、こうしたウソを続けることで、アメリカは何も守れず、何も勝ち取れず、大量のものを失っていた―そしてやがてはポスト9・11の「われわれ」と「あいつら」との間にほとんど差がなくなってしまう。

・市民の自由は相互依存しているから、自分のプライバシーを譲り渡すのは、全員のプライバシーを譲り渡すに等しい。

それを便宜上諦めることはできるし、プライバシーは隠しごとのあるやつしか必要としないという通俗的な王実を使って捨て去ることもできる。でも隠すことがないからプライバシーなんか必要ない、不要だと主張するのは、言うことがないから言論の自由なんかどうでもいいというに等しい。
(中略)あれやこれやといった自由が、今日の自分にとって意味がないからといって、それが明日には自分や、ご近所や―あるいは地球の裏側で抗議していた、整然とした反対者たちの群衆にとって意味がないということにはならない。

・アメリカが諜報を共有する主要国、ファイブアイズ=オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス

全てを嗅ぎ出す=データの源を見つけること
すべてを知る=そのデータが何かを突き止めること
すべてを集める=そのデータを補足すること
すべてを処理=そのデータを分析して使える諜報を探す
すべてを活用=その諜報を使ってNSAの狙いを実現すること
すべてをパートナー=そのデータ源を同盟国と共有するということ

・2013年、国家情報長官ジェイムズ・クラッパーは上院・特別情報委員会でNSAが市民の通信の大量収集を行っていないと先生の上で証言。「うっかり集めてしまうかもしれない場合はありますが、でも意図的に行うことはありません」と発言。これは議会のみならず、国民に対する意図的な臆面もないウソだった。


・Tor
https://ja.wikipedia.org/wiki/Tor


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パーティで女の子に話しかけるには [SF]

満足度★60点

パーティで女の子に話しかけるには [Blu-ray]

パーティで女の子に話しかけるには [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ギャガ
  • 発売日: 2019/09/13
  • メディア: Blu-ray
■異星人がウイルスと捉えると面白い


パンクと異星人の親和性があるのかないのか判別はできないが、80年代のミュージックビデオのような映像手法や怪しげなパントマイムを繰り広げる異星人の動きが、前衛的な演劇をみているようだった。
自分が思った展開とはやや異なりチープさが目立つが、足先で鼻をちょんと触ったり、顔をなめたりと異星人ザンの親愛表現が面白い。

地球を「ウォッチャー」しに訪れて何を彼らがしたかったのかは忘れてしまったが、地球人に干渉しないようにしつつ自分たちはPTというリーダー的存在に共食いされて種をつないでいる様子が、ウイルスが宿主に侵入しつつ共生している様子にも思えて興味深い。
遺伝子の交換を行ったザンとエンから生まれた子供たちは、生物であるという自由を大いに謳歌しているようだった。
生命はどこにでもいけて、意思は運命に縛られない。そこに反体制派のシンボル、パンク・ロックをテーマに選んだ意図が盛り込まれているのかもしれない。

このところ立て続けにエル・ファニングの映画を見た。ダコタ・ファニングの端正な顔立ちと違い、どこか初々しい幼さを秘めるような個性的な顔立ちが、印象に残る。

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シコふんじゃった。 [青春・恋愛・コメディ]

満足度★65点

シコふんじゃった。 [DVD]

シコふんじゃった。 [DVD]

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2014/09/12
  • メディア: DVD


■相撲の魅力は伝わらないが、爽やかな後味の青春映画

もっくんが半裸になった!と当時話題になりましたね。
それからもう30年。みる機会がなく、ようやっと拝見。
軽薄だけどモテ男で気の強い主役・秋平にもっくん。伝統やしきたりなど知らずとも、おかしいと思えば審判にくってかかるのがいい。相撲の歴史や用語を無理に使わず、説明臭くならならず、あくまでやる気のない寄せ集め部員が一勝でもいいから勝ちたい、と奮起するようになるまでをコミカルに爽やかに描く。

部員たちの性格や体の動きの癖をうまく利用した指導方法も面白い。
コメディ担当の竹中直人と、飄々とした柄本明“節”が絡み合いそうで絡み合わないことが、むしろドタバタしすぎなくていいですね。

正子は相撲をとりたいスージョなのかな?と思っていたら、シンプルに恋する乙女だったのが予想外。
「私、相撲取る!」と胸にテーピングを巻いて出てきたときはなるほど、と唸りました。土俵上では肌色か白のテーピングなら着用可なんですよね。
制作陣は仕切り線で足を滑らすなど、細かいところで相撲をよく観察している。
ただ納得できないのはマネージャーかと思いきや、ただの冷やかしだったヒロイン・清水美沙の動機が最後までよくわからなかったこと。また、いくら廃部を救うとはいえ秋平が留年までするかな?
しかしタイトルが最後のヒロインの台詞とはしてやられた!

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