SHAMEーシェイムー [ヒューマンドラマ]
満足度★60点
■SHAMEは禁断の恋を意味するのか
いろいろ想像力を掻き立てられる映画だ。
兄と妹の関係性。
「いた場所が悪かっただけ」というシシーの言葉。
過去に一線を越えたのだろうか。それとも一線を越えられない苦しさが、互いに依存症として現れてしまっているのだろうか。血のつながった兄妹なのかどうかも、劇中からはわからない。
人とつながりたい気持ちはあるが、どうしても関係性に意味を見出すことができず、苦しむ主人公ブランドン。 一度会社の女性とデートした際のセリフは、真意の裏返しだろう。
本当に一晩の関係だけで満足できるなら、悩む必要などない。
ハンサムで金持ち。恋人がいなくても、恋愛ごっこなら誘いにのる女性はたくさんいる。
苦しいのは考える時間がたっぷりあることぐらいか。だとすれば、やはりブランドンの苦しみは常につきまとう虚無感。その根元は何か。
対する妹シシーは恋愛依存症。相手を求める気持ちが強く、誰かが側にいないと不安になる。相反する二人の現代人らしい苦しみを、長めのワンカットで見るものを共感へと誘う。話に解はないが、最後、主人公の微笑みをどう解釈するか。 キャリー・マリガンは瑞々しさと危うい可愛さで目が離せない魅力があった。
いろいろ想像力を掻き立てられる映画だ。
兄と妹の関係性。
「いた場所が悪かっただけ」というシシーの言葉。
過去に一線を越えたのだろうか。それとも一線を越えられない苦しさが、互いに依存症として現れてしまっているのだろうか。血のつながった兄妹なのかどうかも、劇中からはわからない。
人とつながりたい気持ちはあるが、どうしても関係性に意味を見出すことができず、苦しむ主人公ブランドン。 一度会社の女性とデートした際のセリフは、真意の裏返しだろう。
本当に一晩の関係だけで満足できるなら、悩む必要などない。
ハンサムで金持ち。恋人がいなくても、恋愛ごっこなら誘いにのる女性はたくさんいる。
苦しいのは考える時間がたっぷりあることぐらいか。だとすれば、やはりブランドンの苦しみは常につきまとう虚無感。その根元は何か。
対する妹シシーは恋愛依存症。相手を求める気持ちが強く、誰かが側にいないと不安になる。相反する二人の現代人らしい苦しみを、長めのワンカットで見るものを共感へと誘う。話に解はないが、最後、主人公の微笑みをどう解釈するか。 キャリー・マリガンは瑞々しさと危うい可愛さで目が離せない魅力があった。
薬の神じゃない! [ヒューマンドラマ]
満足度★95点
■法律は誰のためにあるのかを問う
だらしない生活を送り、売れない滋養強壮剤を販売する貧乏だった男が、ひょんなことからインドから白血病患者のためジェネリック医薬品を密輸することになり、患者の現実に直面する。
仲間集め、手にした成功、にわかにうまれる友情、そして逮捕の恐怖と離散…、最初は金儲けのためにとビジネスを始めた男の心境の変化もあわせて、話はスピーディーに展開し一級の娯楽品に仕上がっているが、忘れてはいけないのがこれが事実をベースにしているということで、社会の現実を問いかけてくる。
薬は患者を助けるために開発されたのではないのか?
法律は市民を助けるためにあるのではないのか?
「本物の病気は貧乏であり、それは治せない」という痛烈な皮肉めいた台詞もあったが、否、病気だからこそ貧乏になる側面もあり、貧乏だから病気になることもある。誰もが病気にならない保証などない、というのはまさにその通り。
開発費回収のためつり上がる薬価。
ビッグファーマをめぐるテーマはいつもこの問題が俎上にあがる。
開発の利益を守りたい製薬会社と現場の医師と患者の構造は、そのまま権力の構図に変換される。
法が市民を助けないのなら、法そのものが間違っているのだと一石を投じないと、政治も社会は動かないのだとこの映画は伝えるが、当局の締め付けの場面がやや緩いのは、無事公開されるように忖度したのか?と思うと、少し興醒めでする部分もある。
それにしてもチョンを取り巻く登場人物のキャラが際だち、共通目的のため悪事(という名の善行)に手を染めていく様が、【 オーシャンズ11 】のような犯罪組織もののようで、とてもスリリングでおもしろい。
チョンの義理の弟が刑事で捜査に葛藤したり、インドの不法医薬品生産会社の社長とチョンがビジネスをこえ連帯感を共有したりと、すみずみまで胸熱の演出も。
話には関係ないが、刑事役が小栗旬にみえてしかたがなかった。
■法律は誰のためにあるのかを問う
だらしない生活を送り、売れない滋養強壮剤を販売する貧乏だった男が、ひょんなことからインドから白血病患者のためジェネリック医薬品を密輸することになり、患者の現実に直面する。
仲間集め、手にした成功、にわかにうまれる友情、そして逮捕の恐怖と離散…、最初は金儲けのためにとビジネスを始めた男の心境の変化もあわせて、話はスピーディーに展開し一級の娯楽品に仕上がっているが、忘れてはいけないのがこれが事実をベースにしているということで、社会の現実を問いかけてくる。
薬は患者を助けるために開発されたのではないのか?
法律は市民を助けるためにあるのではないのか?
「本物の病気は貧乏であり、それは治せない」という痛烈な皮肉めいた台詞もあったが、否、病気だからこそ貧乏になる側面もあり、貧乏だから病気になることもある。誰もが病気にならない保証などない、というのはまさにその通り。
開発費回収のためつり上がる薬価。
ビッグファーマをめぐるテーマはいつもこの問題が俎上にあがる。
開発の利益を守りたい製薬会社と現場の医師と患者の構造は、そのまま権力の構図に変換される。
法が市民を助けないのなら、法そのものが間違っているのだと一石を投じないと、政治も社会は動かないのだとこの映画は伝えるが、当局の締め付けの場面がやや緩いのは、無事公開されるように忖度したのか?と思うと、少し興醒めでする部分もある。
それにしてもチョンを取り巻く登場人物のキャラが際だち、共通目的のため悪事(という名の善行)に手を染めていく様が、【 オーシャンズ11 】のような犯罪組織もののようで、とてもスリリングでおもしろい。
チョンの義理の弟が刑事で捜査に葛藤したり、インドの不法医薬品生産会社の社長とチョンがビジネスをこえ連帯感を共有したりと、すみずみまで胸熱の演出も。
話には関係ないが、刑事役が小栗旬にみえてしかたがなかった。
コーダ あいのうた [ヒューマンドラマ]
満足度★80点
■彼らの世界へ導く演出に、はっとさせられる
あの無音の演出がなければ、この映画がそこまで高い評価を得なかったのでないだろうか。
私たちが外側からみていた彼らの世界へ、観客を一気に連れて行った。
ルビーの人生のハイライトであり、観客が一番観たいと思う映画のハイライト。
その大切な大切な瞬間を、共有できない家族。
その立場を、少しでも観客が理解できたら。あの大胆さには、そういう創り手の思いが感じられた。
自分の娘が耳が不自由であってほしかったという、閉鎖的な性根の母親・ジャッキー。
家族に頼られたいもどかしさを妹にぶつける兄・レオ。
快活な性格な割に、現状打破に重い腰の父・フランク。
そして自分の意気地なさを、家族がいるからと言い訳にする娘・ルビー。
しかし健常者も不自由な人も関係なく、自分の殻を破る勇気があれば、少し違う新しい日々を送れるかもしれない。
そんな風に背中を押してくれる映画だった。
現実には、こんなにお綺麗なことばかりではないかもしれない。
身体障害者を取り巻く環境は、もっと厳しいかもしれない。
でも、結局自分を幸せにするのは自分自身なんですよね。
最後のステージで手話を交えながら歌い上げる場面は、ルビーが本当に気持ちを伝えたい相手は誰だったのかよく伝わり、涙無くしてはみられませんでした。
興味深かったのは、前述したジャッキーのセリフで、自分の娘が健常者だとわかったときに落胆したというところ。「わかりあえないかもしれない」と不安になったの弁の裏に、自分が娘を妬むのではないか?という杞憂を垣間見た。
そこで気が付いたのは、私たちは彼らのことを勝手に「社会的弱者だから人の弱さに寛大で、優しい人々」と勝手にカテゴライズしていないだろうかということ。特に映画の中では。そういって一括りにすることで、現実社会において彼らを息苦しくさせているかもしれない。
少し物足りなかったのは少人数だけで話が完結してしまい、ルビーを取り巻く学校の世界が少し小さすぎて見えたこと。同じ音楽クラスの子たちがルビーの歌唱力をどう評価しているのかなど、少し絡みが欲しかった。
■彼らの世界へ導く演出に、はっとさせられる
あの無音の演出がなければ、この映画がそこまで高い評価を得なかったのでないだろうか。
私たちが外側からみていた彼らの世界へ、観客を一気に連れて行った。
ルビーの人生のハイライトであり、観客が一番観たいと思う映画のハイライト。
その大切な大切な瞬間を、共有できない家族。
その立場を、少しでも観客が理解できたら。あの大胆さには、そういう創り手の思いが感じられた。
自分の娘が耳が不自由であってほしかったという、閉鎖的な性根の母親・ジャッキー。
家族に頼られたいもどかしさを妹にぶつける兄・レオ。
快活な性格な割に、現状打破に重い腰の父・フランク。
そして自分の意気地なさを、家族がいるからと言い訳にする娘・ルビー。
しかし健常者も不自由な人も関係なく、自分の殻を破る勇気があれば、少し違う新しい日々を送れるかもしれない。
そんな風に背中を押してくれる映画だった。
現実には、こんなにお綺麗なことばかりではないかもしれない。
身体障害者を取り巻く環境は、もっと厳しいかもしれない。
でも、結局自分を幸せにするのは自分自身なんですよね。
最後のステージで手話を交えながら歌い上げる場面は、ルビーが本当に気持ちを伝えたい相手は誰だったのかよく伝わり、涙無くしてはみられませんでした。
興味深かったのは、前述したジャッキーのセリフで、自分の娘が健常者だとわかったときに落胆したというところ。「わかりあえないかもしれない」と不安になったの弁の裏に、自分が娘を妬むのではないか?という杞憂を垣間見た。
そこで気が付いたのは、私たちは彼らのことを勝手に「社会的弱者だから人の弱さに寛大で、優しい人々」と勝手にカテゴライズしていないだろうかということ。特に映画の中では。そういって一括りにすることで、現実社会において彼らを息苦しくさせているかもしれない。
少し物足りなかったのは少人数だけで話が完結してしまい、ルビーを取り巻く学校の世界が少し小さすぎて見えたこと。同じ音楽クラスの子たちがルビーの歌唱力をどう評価しているのかなど、少し絡みが欲しかった。
スティーブ・ジョブス [ヒューマンドラマ]
こちらを観るのだったらマイケル・ファスベンダー主演作を勧める。 当時アシュトン・カッチャーが似ていると話題になり絶賛されていたため、その記憶が残っていたためか少し期待しすぎた。
ジョブスがなぜ天才と言われるのか、ウォズとの決定的な考え方の違いがはっきりとはせぬまま、肝心なところが省略されてしまったように感じる。
ウォズはユーザーがosに手を加えられるような仕様にしたかったが、ジョブスがそれを否定したことが決定的な決別の原因になったと、本で読んだ気がする。
経営者としての描き方も、言うが易しで一方的に要望を突きつけているようにしか見えない。
人々を閃きへと導く手腕があったからこそ崇められているのだと思ったが、その才能の片鱗は描かれず。
非アップルユーザーとしては、彼の凄さが伝わらず物足りない作品でした。
ギフテッド [ヒューマンドラマ]
満足度★85点
■こどもの気持ちは尊重されないのか
いつもこの手の映画を見ると思うことなのだが、子供の気持ちは尊重されないのだろうか。
アメリカでは両親とも実親なのに親権が剥奪されて、子供が里親に出されることもあると聞く。
誰かに通報されてからなのか、飲酒運転や書類送検など軽犯罪の前科があるから審査されるのかそれは知らない。
今回は自分の成し得なかった夢の実現を子供に強制し、人間らしい生活を奪った女性イブリンと息子である主人公フランクとの確執が軸になり、スリリングな法廷劇としても発展するが「こどもにとって何が一番幸せなのか」がテーマになっていることは変わらない。
イブリンはフランクの姉にスパルタ教育と完全な監視下に置き、青春時代と人間らしい生活と幸せを奪った。
姉は娘メアリーをフランクに託した後、自殺。
メアリーに天武の才があることを見抜いたイブリンは、メアリーの親権を奪おうとして息子のフランクを訴える。
とここまで書いてみると、イブリンのとんでもない人間性がわかるのだが、ここまで彼女を駆り立てたものは何だったのか。自分の考えが皆を不幸にすると認めない頑固な姿勢と、自分の成し得なかった夢を自分の血をついだ者の手で成し得たいという欲望、そして世間からの承認欲求、娘への過剰な期待。それらすべてだろうか。
きっとイブリンも自分の人生の過ちに気がついていたのではないだろうか。
しかし認めたら最後、その虚無感に自分が飲み込まれてしまうのを感じ、鉄の意志でその迷いを塞いだのではないだろうか。自分の子供に天武の才があったとしても、監禁して子供時代にしか感じることのできない情緒を奪うことは許されない。感情を自由にできる時代に抑圧すれば、人間らしさの欠如を生むことは、想像に難くないはず。 実はイブリンが望んだ方程式を解いていた姉。
「母親が死んでからそれを公表して」とフランクへ残した遺言に、彼女の心に負った傷を思う。
彼女はきっと、本当は誰よりも母親に認めてもらいたかったけれど、同じくらい憎んでもいたんだろう。
誰も幸せじゃない。誰も幸せにならない、なぜここまで家族を追いつめられるのだろうか。
イブリンに呆れを通り越して哀れみさえ感じた。親権の話に戻る。
他人が家族関係のことを把握するのは至難の業だけど、親に虐待されているかどうかは、注意深く子供を観察し、会話すればわかるのではないだろうか。親と引き離したときにほっとした様子を見せたり、逆に戻りたくないと怯えた様子をみせたり。
今回メアリーはフランクと引き離されて泣いていた。こんなに愛着をもっている相手と引き離して、なにが幸せなのだろうか。安心できる場所が居場所なのではないだろうか。
法は誰から何を守るためにあるのだろうか。
メアリーの水準にあった教育も、こどもらしい生活も両方を与えよう。
フランクの最後の選択が、最初からベターだったんだと思う。イブリンは最初からお金を援助すればいいだけ。
人って簡単なことに遠回りする。子供に幸せを与えるのは難しいけど、そもそも大人が子供の気持ちを無視しすぎだと思う。現実社会においても。
黒人のいい助言役が板に付いたオクタヴィア・スペンサーが、クリス・エバンスの熱演を支える。
■こどもの気持ちは尊重されないのか
gifted/ギフテッド [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2018/10/17
- メディア: Blu-ray
アメリカでは両親とも実親なのに親権が剥奪されて、子供が里親に出されることもあると聞く。
誰かに通報されてからなのか、飲酒運転や書類送検など軽犯罪の前科があるから審査されるのかそれは知らない。
今回は自分の成し得なかった夢の実現を子供に強制し、人間らしい生活を奪った女性イブリンと息子である主人公フランクとの確執が軸になり、スリリングな法廷劇としても発展するが「こどもにとって何が一番幸せなのか」がテーマになっていることは変わらない。
イブリンはフランクの姉にスパルタ教育と完全な監視下に置き、青春時代と人間らしい生活と幸せを奪った。
姉は娘メアリーをフランクに託した後、自殺。
メアリーに天武の才があることを見抜いたイブリンは、メアリーの親権を奪おうとして息子のフランクを訴える。
とここまで書いてみると、イブリンのとんでもない人間性がわかるのだが、ここまで彼女を駆り立てたものは何だったのか。自分の考えが皆を不幸にすると認めない頑固な姿勢と、自分の成し得なかった夢を自分の血をついだ者の手で成し得たいという欲望、そして世間からの承認欲求、娘への過剰な期待。それらすべてだろうか。
きっとイブリンも自分の人生の過ちに気がついていたのではないだろうか。
しかし認めたら最後、その虚無感に自分が飲み込まれてしまうのを感じ、鉄の意志でその迷いを塞いだのではないだろうか。自分の子供に天武の才があったとしても、監禁して子供時代にしか感じることのできない情緒を奪うことは許されない。感情を自由にできる時代に抑圧すれば、人間らしさの欠如を生むことは、想像に難くないはず。 実はイブリンが望んだ方程式を解いていた姉。
「母親が死んでからそれを公表して」とフランクへ残した遺言に、彼女の心に負った傷を思う。
彼女はきっと、本当は誰よりも母親に認めてもらいたかったけれど、同じくらい憎んでもいたんだろう。
誰も幸せじゃない。誰も幸せにならない、なぜここまで家族を追いつめられるのだろうか。
イブリンに呆れを通り越して哀れみさえ感じた。親権の話に戻る。
他人が家族関係のことを把握するのは至難の業だけど、親に虐待されているかどうかは、注意深く子供を観察し、会話すればわかるのではないだろうか。親と引き離したときにほっとした様子を見せたり、逆に戻りたくないと怯えた様子をみせたり。
今回メアリーはフランクと引き離されて泣いていた。こんなに愛着をもっている相手と引き離して、なにが幸せなのだろうか。安心できる場所が居場所なのではないだろうか。
法は誰から何を守るためにあるのだろうか。
メアリーの水準にあった教育も、こどもらしい生活も両方を与えよう。
フランクの最後の選択が、最初からベターだったんだと思う。イブリンは最初からお金を援助すればいいだけ。
人って簡単なことに遠回りする。子供に幸せを与えるのは難しいけど、そもそも大人が子供の気持ちを無視しすぎだと思う。現実社会においても。
黒人のいい助言役が板に付いたオクタヴィア・スペンサーが、クリス・エバンスの熱演を支える。
野性の呼び声 [ヒューマンドラマ]
満足度★75点
■ファンタジー色の強い動物実写もの
一匹の暢気な飼い犬が、過酷な環境に放り出され、己の中の獣性と本能を呼びさまされていく過程を描いた冒険譚。
冒頭、実写の犬の表情をCGでいじりすぎていて、子供向けすぎるか・・・?と不安を覚えるも、じょじょにコメディ的な動きは抑え気味になり、こちらも世界観に慣れていった。
生来の優しさがリーダーとしての「器」として認められ、仲間から信頼され成長し、森林狼と子供を成し、いつしかその存在が伝説となるというお伽話のような展開。
ロマンがあって好みなのだが、いざハリソン・フォードと伝説の地へと旅立つ一番の山場がダイジェストになっていて、拍子抜けした部分も。散々ハリソン爺さんと犬が激流下りをする場面が宣伝されていたためか、開拓者の間で伝説となっていた土地へ、このコンビがいかにしてたどり着くまでかが丹念に紡がれるのだと期待してしまった。
そこにさえ目をつぶれば、起承転結のあるとても起伏に富んだ面白い人生ならぬ「犬生」であり、犬の目を通じて時代に翻弄され夢にしがみつく人間の悲哀もたっぷり描いた、贅沢な作品とはいえる。
ハリソン爺、ベック共に最後の場所を見つける。人生とは?と大きなテーマさえ投げかける壮大さも感じさせてくれた。
■ファンタジー色の強い動物実写もの
一匹の暢気な飼い犬が、過酷な環境に放り出され、己の中の獣性と本能を呼びさまされていく過程を描いた冒険譚。
冒頭、実写の犬の表情をCGでいじりすぎていて、子供向けすぎるか・・・?と不安を覚えるも、じょじょにコメディ的な動きは抑え気味になり、こちらも世界観に慣れていった。
生来の優しさがリーダーとしての「器」として認められ、仲間から信頼され成長し、森林狼と子供を成し、いつしかその存在が伝説となるというお伽話のような展開。
ロマンがあって好みなのだが、いざハリソン・フォードと伝説の地へと旅立つ一番の山場がダイジェストになっていて、拍子抜けした部分も。散々ハリソン爺さんと犬が激流下りをする場面が宣伝されていたためか、開拓者の間で伝説となっていた土地へ、このコンビがいかにしてたどり着くまでかが丹念に紡がれるのだと期待してしまった。
そこにさえ目をつぶれば、起承転結のあるとても起伏に富んだ面白い人生ならぬ「犬生」であり、犬の目を通じて時代に翻弄され夢にしがみつく人間の悲哀もたっぷり描いた、贅沢な作品とはいえる。
ハリソン爺、ベック共に最後の場所を見つける。人生とは?と大きなテーマさえ投げかける壮大さも感じさせてくれた。
47歳 人生のステータス [ヒューマンドラマ]
満足度★60点
■本物の非正規雇用者には心に響かない
あることをきっかけに自分の人生を振り返り、「自分は負け犬なのではないか」と惑い危機感を募らせた47歳の男の物語。
コメディでもない。かといってコメディ要素がないともいえない。
ベン・スティーラーが持ち前のおかしみを醸し出してるため、深刻すぎることにもならない。
はっきりいって、どのモチベーションで観ていいのか戸惑う。
主人公の同級生が夢見るような成功者ばかりでまるでファンタジー。
だからこそ、最後に主人公が彼らの生活も虚飾にまみれてると喝破し自分は自分と割り切るのならスカッとするけども、最後まで片思いのように悶々としたまま終わるのではっきりいって鬱陶しい。
主人公は市民の代弁者なのだけど、息子はハーバードに行けるぐらい頭脳明晰、友人も明るい妻もいて、マイホームも持ち、端からみれば十分豊かな部類に入るから余計に鼻白む。
若い社員が「金持ちに資金を援助してもらうより、自分で稼いだ方が早い」と仕事を辞めたことがそもそもの発端なのだが、金持ちが遊興に使うところを寄付させてるのだから、主人公の仕事だって有意義なはずだ。金こそ全てという拝金主義にとらわれ、友人クレイグとの食事シーンで本当の負け犬になってしまった。
幸せに気づいていない幸せ者の話を観ても、本物の非正規雇用者には心に響かない。息子の台詞が核心のメッセージなのだろうけど、笑いありで表現してほしかった。
あることをきっかけに自分の人生を振り返り、「自分は負け犬なのではないか」と惑い危機感を募らせた47歳の男の物語。
コメディでもない。かといってコメディ要素がないともいえない。
ベン・スティーラーが持ち前のおかしみを醸し出してるため、深刻すぎることにもならない。
はっきりいって、どのモチベーションで観ていいのか戸惑う。
主人公の同級生が夢見るような成功者ばかりでまるでファンタジー。
だからこそ、最後に主人公が彼らの生活も虚飾にまみれてると喝破し自分は自分と割り切るのならスカッとするけども、最後まで片思いのように悶々としたまま終わるのではっきりいって鬱陶しい。
主人公は市民の代弁者なのだけど、息子はハーバードに行けるぐらい頭脳明晰、友人も明るい妻もいて、マイホームも持ち、端からみれば十分豊かな部類に入るから余計に鼻白む。
若い社員が「金持ちに資金を援助してもらうより、自分で稼いだ方が早い」と仕事を辞めたことがそもそもの発端なのだが、金持ちが遊興に使うところを寄付させてるのだから、主人公の仕事だって有意義なはずだ。金こそ全てという拝金主義にとらわれ、友人クレイグとの食事シーンで本当の負け犬になってしまった。
幸せに気づいていない幸せ者の話を観ても、本物の非正規雇用者には心に響かない。息子の台詞が核心のメッセージなのだろうけど、笑いありで表現してほしかった。
ルーシー・イン・ザ・スカイ [ヒューマンドラマ]
■宇宙に人生を狂わされた女性
ベースとなったのはリサ・ノワックという宇宙飛行士が巻き起こした、ただの不倫と痴話げんかというありふれた事件なのですが、今作は「着想を得た」と挿入されるとおり、彼女を不倫に走らせた「そもそもの原因」を想像して膨らませた物語。
とはいえ、やはり不倫ぐらいしか大きな出来事は起きないし、物語が大きく揺れ動くのは後半なので求心力はやや弱いと感じた。
とはいえ、やはり不倫ぐらいしか大きな出来事は起きないし、物語が大きく揺れ動くのは後半なので求心力はやや弱いと感じた。
はっきりいって、どんどん堕ちていくナタリー・ポートマンの演技を見たいがために見続けたようなもの。あのアミダラ女王がダークサイドに…と不謹慎?な想像をしつつ、楽しむ気持ちも若干あったことがいなめない。
実話は置いておいて、ルーシーには少し同情してしまう。
一度高山に登ってしまうと低山の景色では物足りなくなるのと同じで、最高の経験をしてしまうと他のことでは満足できなくなる気持ちもわかる。
まだ体力も衰え切ってはいないし、再度宇宙へ行く夢を諦める条件には置かれていない。
潜水服浸水のときに心拍数が上がらなかった(パニックにならなかった)ことが評価されるのかと思いきや、それが選考に落とされた原因になったことは不思議だし不運。何でもいいから彼女を宇宙に行かせてやれよ、と思ったのが本音。そうすればこれほど堕ちなかっただろうに。
最初から馴れ馴れしく近づいてきたマークは逃げれば追う典型的な浮気男で、宇宙からの帰還後に彼に出会ったのも不運といえば不運。
ソーシャル・ネットワーク [ヒューマンドラマ]
■精神的に未熟な天才
彼女に振られた腹いせと、エリートを見返したいという劣等感からFacebookは生まれた。
世界最年少の億万長者は、抑揚のないボカロのような話し方をする変人で、歯に衣きせぬ物言いで人を白けさせ、元カノへの未練を断ち切れない孤独な男。
数ある訴訟騒ぎは、人心へ心を砕くほどのキャパシティーがなさ過ぎて、結果的に裏切ることになってしまっただけ。社会の抱く、若くして成功者という虚像とはかけ離れ、実像は人とうまく繋がれない不器用で、寂しい青年だった…。
……という描き方をされているが、あくまでこれはフィクション。
ザッカーバーグ本人からすれば、世の羨望から目がそらされ、いいことずくめか。
フィンチャー監督は、若者の孤独感を見事に描いている。文武両道のリア充を妬んでいるにも関わらず、それを餌にして女性もつるというねじれた承認欲求、新しいSNSへの欲望と興奮がネットという世界で奔流していくにも関わらず、本人がその流れの外にいる対比などが素晴らしい。
元々のアイデアを他人から盗み、それを開き直って「具現化できる技術と知性があるのか?」と言い放つが、「やったもん勝ち」の理論で突っ走る幼稚さと傲慢さも青臭く、生々しい。この生々しさがフィクションということを忘れさせる。そしてそれは、まだ世間に責任を負う年齢ではないからこそ許される雰囲気がある。
ラスト、元カノのFacebookを何度も更新するキー連打まで憎いほど完璧な、まさに青春映画。
ちなみにナップスターCEO、ショーン・パーカー役にジャスティン・ティンバーレーク。 このサービスに多少は犠牲を強いられてきた側のミュージシャンを充てるあたり、憎いキャスティング。 Facebookを複数形にするな、そして広告は入れるなという助言がクール。
世界最年少の億万長者は、抑揚のないボカロのような話し方をする変人で、歯に衣きせぬ物言いで人を白けさせ、元カノへの未練を断ち切れない孤独な男。
数ある訴訟騒ぎは、人心へ心を砕くほどのキャパシティーがなさ過ぎて、結果的に裏切ることになってしまっただけ。社会の抱く、若くして成功者という虚像とはかけ離れ、実像は人とうまく繋がれない不器用で、寂しい青年だった…。
……という描き方をされているが、あくまでこれはフィクション。
ザッカーバーグ本人からすれば、世の羨望から目がそらされ、いいことずくめか。
フィンチャー監督は、若者の孤独感を見事に描いている。文武両道のリア充を妬んでいるにも関わらず、それを餌にして女性もつるというねじれた承認欲求、新しいSNSへの欲望と興奮がネットという世界で奔流していくにも関わらず、本人がその流れの外にいる対比などが素晴らしい。
元々のアイデアを他人から盗み、それを開き直って「具現化できる技術と知性があるのか?」と言い放つが、「やったもん勝ち」の理論で突っ走る幼稚さと傲慢さも青臭く、生々しい。この生々しさがフィクションということを忘れさせる。そしてそれは、まだ世間に責任を負う年齢ではないからこそ許される雰囲気がある。
ラスト、元カノのFacebookを何度も更新するキー連打まで憎いほど完璧な、まさに青春映画。
ちなみにナップスターCEO、ショーン・パーカー役にジャスティン・ティンバーレーク。 このサービスに多少は犠牲を強いられてきた側のミュージシャンを充てるあたり、憎いキャスティング。 Facebookを複数形にするな、そして広告は入れるなという助言がクール。
「運び屋」 [ヒューマンドラマ]
満足度★85点
■軽快なタッチで描きつつもご都合主義ではなくラストに、爽やかな涙を誘う
アールは家庭を顧みず仕事に打ち込んできた、まさに仕事が趣味の男。花がそんなにお金になるとは知らなかったが、その業界では品評会で高評価を受け一目置かれる。 栄光の時代も終わり、気がつけば孤独に。その埋め合わせをするかのように、グレーと感づきながらも麻薬の運び屋となる。
面白いのは、アールの堂々とした立ち居振る舞いや言動に、マフィアたちも巻き込まれていくところ。友情めいたものまで育んでしまうのだから、イーストウッド爺さんの存在感恐るべし。若い女性になんかモテる、というのも説得力。対比して奥さんの苦労は仕事だけじゃなかったんだな、というのも垣間見える。 また、お金の使い道というものを考えさせられる点も。
運び屋という仕事は汚いものだが、報酬の使い方は孫の学費や退役軍人のサロンの修繕など、周囲を喜ばすことばかりだ。よほど、チンピラがろくでもないことに使うより、善用しているといえる。
違法になるのは、それが法律違反だと定められているからであり、定めたのは第三者であり、こちらの承諾無しに意図存在してきたものでもある。アールが運び屋とならなくても、代わりに誰かが雇われるだろう。そこに複雑なものが去来する。しかし、彼は積み荷の正体を見てしまった以上、無用な言い訳をせず罪を潔く認める。 その姿は清々しいし、彼がどちらかというと乱暴な言葉遣いで紳士然としていないからこそ、不器用な人生を送った男の悲哀が立ち上る。
しかし一番大事な家族の絆を取り戻したアールは、たとえ獄死しようとも本望なのだろう。「ミリオンダラー~」や「グラン・トリノ」のように劇的すぎないのがよい。きっと獄中でも「アール節」で周囲を巻き込んでいくんだろう。
少ない会話で彼の背景を汲み取るベイツ刑事の存在も、出しゃばりすぎず良い。
しかしブラッドリー・クーパーってこんなにさっぱりした顔してたっけ。